文●公認会計士 蒲池 孝一

 前号では、技術や商品、経営の仕方のパターンを路線と呼び、横棒の線で描きましたが、それはやや表面的でした。路線というと、海外進出路線とか、ある品種への傾斜生産とか、経営計画的なものを思い浮べてしまいます。それなら、企画部あたりがしっかりと検討すれば変更できる、つまり、路線2が作れると思われたかもしれません。それによって再生されるならば結構なことです。
 しかし、それは、ちょうど本シリーズの最初に示した(本誌2009年10月号参照)反応システムの範囲のことではないでしょうか。筆者が指摘したいのは、むしろ、そういうことをいくら考えてもうまくいかないようになってしまった時に、どうしたら再生できるのかということです。

【例1】ある専門誌。その道の専門家たちが若かりし頃、こぞってこの雑誌を手にし、掲載されている人々はまさに彼らの憧れの的だった。しかし、半世紀の時を経て、さまざまなメディアが登場してくるにつれ、部数が減少。トップは廃業を覚悟したが、その前にコンサルタントに相談。コンサルタントは、社員が伝統に頼って営業努力もコスト管理もできていない、と経営管理強化を打ち出す。トップは、そんなことをしても駄目かもしれないとは思ったものの、今一度、やってみようと社員にはっぱをかける。

【例2】ある建機レンタル会社は、人材不足から自分たちのテリトリーの拡大を避けてきた。しかし、大手メーカと資本提携した後、派遣されてきた幹部は、景気減速を前に「本業の拡大こそ必要だ、人材は養成できる」と、拠点進出を提案。まさに正論で、反対の声はあがらず、進出が決まった。

  例1のコンサルタントはこれまでの経営の問題点を克服しようとします。つまり、もっと考えて努力せよ、というものです。例2は、「我々はメーカである」という信念に基づいた正しい道を進もうとします。
例1,2とも、社員が納得せざるを得ない新方針です。しかし、それでも、先行きが困難であろうことは、読者にもお分かりと思います。ともに、前号で言う「路線2」ではないのです。
 うまく環境と適合しない、その根本が何であるかを探るのは、実はかなり厄介です。固定した反応の仕組みを生み出しているもの、その根本は常識というものです。渦中にいると、自分たちではそれになかなか気が付くことができませんが、それを明らかにすることが、実は、再生の最も重要であり、かつ厄介な仕事なのです。(注1
 トップは現在の路線とその背後の考え方、つまり常識が環境への適合度を失いつつあるのかどうかということを常に気にする必要があります。兆しの段階でキャッチする、いや、キャッチできるような組織運営を行うことが大事です。次号では、そのためのトップの心がまえに触れることにします。 


※注1 路線の背後に、「風土」や「企業体質」のようなものがあるとして、事業再生の現場では「風土改革」を進めることが多い。(株)コア(既出、コンサル会社)の柴田昌治著「なぜ会社は変われないのか?危機突破の風土改革ドラマ (日経ビジネス人文庫)」ではこれまで作り上げられてきた風土が危機をもたらしているという「私見」が、新基軸を作り上げていく姿がドラマ風に描かれ、多くのビジネスマンの共感を得ている。

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2010年2月号(VOL 115)より

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