文●株式会社コア取締役/組織開発コンサルタント/公認会計士 蒲池 孝一
前号では、人の自我の3つの部分を図解しました。P(Parent)と、A(Adult)と、C(Child)と。
個人個人が、みな、これらの3つの部分を心の内側に持っていて、それが、場面によって表に登場するのです。
組織の長として活躍されている人はPが強く働く傾向があります。「新入社員には入社早々にうちの会社の常識を徹底的に教え込むべきだ…」、一方で、新入社員は「会社は学校とは違うなあ、ちゃんと言うことを聞かないとえらいことになりそうだ」と内なるCが思ったりします。また、経理課員が難しい海外取引をどう仕訳するか上司と相談しているときは、課員も上司もとてもクールです。にこりともせずに。Aです。
自我状態はこのように基本的に3つです。しかし、親に父と母が居るように、子供に「おとなしい子」と「やんちゃな子」がいるように、PACは次のように5つに分けられます。
Pは、主に幼年期に親の影響を受けて作り上げられます。
生きていく上の信念やこうあるべきだという規範を親から学びます。規範が心に宿ると、それに沿っていないものには批判的になります。これがCPです。一方で、弱いものを援助しようとか、気の毒な人に涙するこころ、思いやりや優しさも作られます。NPです。CPは信念に従って行動しようとする父親の心、NPは、優しい母親の心、です。
Aは、冷静に観察し、考え、計算します。客観的でクールです。成長に従って作り上げられていく人間的知性です。
Cは、子供が自分で形成する自我で、自由さと外界を恐れる気持ちの両面があります。FCとACです。
FCは、明るく、無邪気に、自分の欲求・感情のままに思い、ふるまいます。
ACは、外界が怖く、親や上司、先生に権威を感じ、従順になります。
これらの5つの要素を人はみんなそれぞれが持っています。そして、それらの要素の強さ(こころのエネルギーです)の組み合わせが、人の個性を作っています。
こういう5つが個人の中でどう分布=組み合わせ=しているかという分析をエゴグラム分析といって、精神医学で使われています。それぞれの要素が平均して高いのが理想的であるともいわれますが、あるエゴグラムの状態が良いということはありません。エゴグラムの形は、人の優劣ではありません。個性です。
しかし、個性は相関の中でとらえると、様々な光景を見せます。
筆者なぞは、FCが高く、何かをやってみようという好奇心旺盛で、元気にふるまいます。が、周りの人がうるさがります。ACの強い人は、上司の指示に従う良い社員になりますが、組織に問題があっても是正する力が働きにくいと言えます。Aが強いと、落ち着いてものごとを深く考えますが、活力は乏しくなるようです。CPが強い人は、組織を強くし、引っ張っていこうとしますが、ワンマンと言われがちです。NPが強い上司は、部下の苦労をいたわりますが、時に軟弱と言われます。
組織の生産性や健康度を考えた場合、こうした自我の個性を、どのような組織にはどのような組み合わせが良いかということを考えることに意味があります。次号では、もう少し掘り下げて考えてみましょう。
エールパートナーズ会計発行:成長企業のための情報誌「グローイングカンパニー」
2010年6月号(VOL 119)より
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