文●公認会計士 蒲池 孝一

 前号では、人の組織について、外界からの刺激への反応プログラムは「常識」となって組織に浸透することをご紹介しました。今号では、常識が危機においてはどうなるかを考えてみます。
 エリートは、危機において、どう動くでしょうか。生体組織ではIL6→IL10反応が固定されているから、想定外の激変にも同じ反応しかできないように、エリートは従来の組織運営の仕方以外の方法を編み出し反撃することができません。これまでの間、自ら確立してきた方法で組織を成功に導いてきた者はその仕方を浸透させることで組織内でも成功しリーダーとなっているのです。
 トヨタの場合を考えてみましょう。過去、トヨタは柔軟な組織運営を行うことを追求してきたはずです。環境変化はあたり前に起こるのだから、いつでも立ち向かえるような柔軟性を現場レベルでも貫くという、大野耐一氏のトヨタ方式(注1)というものがあったはずです。にもかかわらず、昨年秋のリセッションにはなすすべもありませんでした。トヨタもそんな世間並みの会社になっていたのかということです。その通り、世間並みの会社になっていたのです。それは、何年も前から用意されてきたことなのです。
 意外に思うかも知れませんが、原因はQC活動にあったと私たちは考えています(注2)。ご存じのように、QC活動は日本の製造業の発展を支えた活動です。企業の経営管理の極意として普及してきました。トヨタでも、大野氏のトヨタ方式と並行して、QCも行われその優等生でもあったのです。しかし、何事にも良い面の裏には別の面があります。
 QCは科学的管理手法を広めます。上位の目標を分割し下部組織がそれを担うという方針連鎖です。方針はいったん決まったら変更はできず、貫徹すべきものとして登場します。つまり必須、必達、連鎖、整合性という性格をもった会社運営を要求します。実現できない状況となっても目標にまい進することが強制されます。営業目標が期初に建てられればそれを変更することは困難です。あくまでも、目標必達に全力を挙げます。おそらく、読者の皆さんの会社でも、これと同じことがあるはずです。
 我々は、「フレキシブルな組織運営」がトヨタの常識だと思っていましたが、実は、「目標必達」が何年も前からとって代わって常識となっていたのではないでしょうか。そうであれば、環境変化の兆しが見えたくらいでは生産設備の増強方針は引っ込められないはずです。トヨタ方式はトヨタにはなく、QCの精神こそが全社に浸透していたのではないでしょうか。
 生体組織では新種の敵=新型インフルエンザの発生の兆しがあった場合、従来型のIL6→IL10反応では食い止められないことがわかるから、ワクチンを注入します。しかし、人の組織では外部からワクチンを注入することは困難です。自分たちが築き上げてきた常識を真実正しいものと理解しているエリートは、ワクチンを導入するのを拒むのです。兆しを兆しとして認識することもないのかもしれません。
 しかし、報道によれば、トヨタはそれでも何かを始めようとしているようです。何をしようとしているのか、トヨタの社長交代はどんな意味があるのだろうか、しばらく、目を離さず見ていきましょう。

※注1 変化し続ける仕組みを内蔵する組織を作ろうとしてきたのが大野氏で、トヨタ方式はそれを目指すことにあった。詳しくは、『超トヨタ式チェンジリーダー?変わり続ける最強の経営』(日本経済新聞社)を参照されたい。著者はコア取締役の金田秀治氏。
※注2 筆者の属するコアの役員会での議論です。 

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