文●公認会計士 蒲池 孝一

 先号では、生体組織に組み込まれている、IL6→IL10の発生メカニズムを紹介しました。今号は人の組織について考えてみます。

 外界からの刺激=攻撃への反応の仕方は、人の組織では組織ごとに様々異なっています。厳しい競争にさらされている産業機械メーカーの2社の例です。幹部会で売上減少が報告され(それが刺激となって)反応が引き起こされます。原因を分析せよ、方法は従来通り、カバー率・成約率(注1)を精密に分析し内容を探れ、とするA社。かたやB社は、営業マンに、代理店を回れ、ユーザー訪問を強化せよ、目標未達ならば休日返上・残業代カットだと、檄を飛ばします。分析屋さんと行動屋さんの違いともいえるでしょう。A社は同業の中で長年2位に甘んじてきたが、なんとかトップに昇りつめたいという意欲的な会社で、社員は秀才揃いです。B社は業界の暴れん坊で常に高収益を維持する三番手にあります。

 A、B両社にとって売上情報はそれぞれ組織内IL6です。どの情報がIL6になるか、それを受けてどう対応するかというパターンはそれぞれ組織に定着しています。A社は本部が敗因を詳細に分析し、A3用紙にびっしりとレポートをまとめ、予算見直しを期中に何度も行うのが慣例です。B社は社長がユーザーを回ります。各地の営業所の鬼所長も分析よりユーザー回りを好みます。成績が回復しなければ給与はカットされます。会社運営の仕方は、会社ごと別々に固有のくせがあるのです。ある種のIL6にはそれに対応したIL10(指令)が生み出され、全組織に伝播します。その反応プログラム=常識は組織の隅々まで浸透し、その組織メンバーの行動の基準になっています。そして、ある組織の常識は他の組織では常識ではありません。業界でもそう、家庭でも同様です。常識とは、それぞれの組織の成長過程で独自に蓄積されてきた基準なのです。 IL6が持続して生成されれば(売上減少が続けば)、それに応じたIL10(売上減少によって引き起こされる会社の対応)も継続的に生まれます。同じ反撃が繰り返されるのです。時にはその常識に従ったやり方に反抗するメンバーもいますが、彼らには「基本に忠実になれ」と叱ります。基本とは、その組織の常識のことを言うのです。環境諸条件が大きく変化していなければ、時間はかかるが、その常識によった反撃は成功します。そして業績も回復します。組織を強化するには、実地体験によってIL6→IL10の流れを良くすることです。

 さて、いくら反撃してもそれが成功しない事態が生じたとしましょう。生物では従来型の反撃を繰り返すしかありません。外部環境が激変し、その攻撃が巨大・継続的であれば、反撃効果なく死滅します。人の組織でも、従来型反応パターン=常識では効果がない場合もあります。環境諸条件が大きく変化し、これまでの常識では、ダメな場合です。しかし、組織は、それ以外の方法を見いだすことができず、危機に陥ります。常識が組織の動きを縛りつけ、他の方法を編み出したり、寄せ付けないのです。平時、組織が強い(常識が強固に行き渡っている)程そうだと言えます。皮肉にも、こうした常識を作ってきたエリートが、組織を自滅させるのです。

 次号では危機においてエリートが組織を自滅させる、その仕組みを考えます。 

※注1 カバー率とは、ある期間における市場での買い手を自社が把握していた割合、成約率とは、その買い手との商談で成約に至る割合であり、市場占有率(シェア)は、カバー率と成約率の積である。市場占有率をこの二つに分解し、それぞれの下位指標を取り出して営業政策を考案する。筆者も、よくこの手法を使って営業を立て直すが、それが万能であるわけではない。

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エールパートナーズ会計発行:成長企業のための情報誌「グローイングカンパニー」

2009年11月号(VOL 1012)より

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