文●株式会社コア取締役/組織開発コンサルタント/公認会計士 蒲池 孝一
5つに分けられる自我。その強弱が人の個性を形作ります。その人々の集まりが組織です。今回は、このシリーズ最後、組織を固定化してしまうCPについて考えてみます。
組織の規範:常識の働き組織は環境変化のただなかに置かれています。それには、その組織なりの正しいと信ずるやり方に従って処理するしかありません。このやり方は、組織の中に「常識」として定着しているものですが、これに関係するのがCPです。常識とは組織の人たちの心にあり、組織の中で生きていくうちに身についたもの、つまり、日々の営業、事務、生産活動の中で、個人のCPの中身となってきたものです。これが組織の規範となります。
変わり続け、生き続ける組織のエネルギー
環境変化が想定外で、これまでの常識では壁を越えられないとなった場合、組織は、生き延びるために変わろうとします(改革!と叫ぶのがそれです)。が、なかなか変われません。変わるためには新たな常識の萌芽が必要だからですが、それが、なかなか育っていません。前のシリーズで言う、私見、互解のことです。※注
その元は「好奇心」や「やる気」です。「どうも変だぞ、わが社のこれまでのやり方はだめではないだろうか?」「違うやり方を試してみようぜ」と。このようなやる気や好奇心は、人が、子供のときから自然に持っていたエネルギーで、心の中のFCの働きなのです。が、そのような心のFCは組織の中では抑圧されています。肥大化したCPがFCを押さえているのです。
強い成功体験のある会社ほど、成功をもたらしたやり方が覇権を握り、頑固です。それが、組織を死に至らしめることになるのですが、成功体験の持ち主である上司のCPが、他のやり方を編み出すFCを、部下の心の中から追い出してしまっているのです。我が国の伝統的な企業の多くがこのようなありさまです。
上司の役割
上司は、CPは維持しつつ、FCを温存する目配りと行動が必要なのです。では、どうしたら良いでしょう。
誤解を恐れずに言います。CPを維持強化させるより、溌剌とやるFCを育てていくことです。
日々の部下への対応を振り返ってみてください。正しい正しいと自己肯定しながら部下を叱って指導し、結局は、部下のやる気(FC)を抑圧して、ひどい場合は滅ぼして(FCの強い部下を冷遇し社外に放り出してしまうなど)しまっていませんか。
もちろん、理想・理念・規範を貫くにはCPが不可欠です。が、CPを維持しつつ、FCを育てるには、上司が、感情的にならず、穏やかなAの持つ論理の援けを得て、部下達の心に自然に植え付けることです。「何故なのか」という疑問に応える形の会話の積み重ねがそれです。試してみてください。
※注 常識への個人的疑問(変だぞ!)が「私見」。これが議論を呼び、賛同者を得れば、互解(=相互理解)になり、今の常識に対抗する改革の芽になる、ということ。詳しくは本誌10年1月号 組織の成長を維持する変化のマネジメントを参照。
エールパートナーズ会計発行:成長企業のための情報誌「グローイングカンパニー」
2010年9月号(VOL 122)より
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