文●マーケティングコンサルタント 中安 康
今や、デジタル社会となりました。機器の操作方法、聞いたことのない名称、機能の多さで、素人にとっては、たかがカメラ、たかがビデオで悪戦苦闘する多難な時代です。 もちろん、機能がどんどん増えることはマニアックな人にとってはいいことでしょうが、大多数の人にとっては、迷惑な話です。とはいえメーカーは、技術革新に対応してどんどん機能を増やしてきました。そんな中で急成長したのが、「素人の味方=ジャパネットたかた」でした。
市場セグメントすると見える市場
デジタル家電といえば、家電量販店が都心部でも郊外でも、しのぎを削っています。しかし、デジタル難民とも言える素人(特に主婦や高齢者)にとっては、専門用語をまくしたてる家電量販店の店員は異星人のようです。
アナログの時代は、近くの街の電気屋さんから購入して、設置や使い方説明から修理まで面倒を見てもらっていました。ところがデジタル家電の時代になって、面倒を見てくれるはずの街の電気屋さんがデジタル化について来られなくなりました。背景には後継者不在による高齢化、家電量販店の低価格戦略による倒産や閉店があります。
そんな状況の中で、頼れるデジタル街の電気屋の店主、ジャパネットたかたの高田社長が登場しました。
そこには、主婦や高齢者といった忘れられた市場があったのです。そういう方にとっては、デジタル家電を購入しようとすると、家電量販店は敷居の高い店ですし、街の電気屋さんでは説明しきれない商品ジャンルでした。
デジタル商品を解りやすく伝える
ジャパネットたかたは、当初、ラジオでショッピング放送を流しました。それが予想外の大ヒットとなり、テレビショッピングを始め、更に自前のスタジオを持って生放送を流すまでになります。生放送だとビデオの5倍もの売上になるそうです。テレビで高田社長の語り口を聞いて、ワクワクしながら買う喜びは、実際に電気屋さんで買う以上の感動です。まさに街の電気屋さんの真骨頂です。
高田社長は、言います。※「私が商品を紹介するときに大切に考えているのは、その商品の魅力を真摯に『伝えたい』という気持ちと姿勢です。たとえばデジタルカメラの紹介をするとき、説明書には難しい言葉がありますが、すべてのお客様に伝えるために、自分の言葉で噛み砕いて、誰もが分かるようにやさしく伝えることが必要です。その理解が共感となり、商品を使う楽しさの共有となり、商品購入につながっていきます。」

商品の先にある生活の提案
高田社長は、こう続けます。「私たちは単にモノを売っているのではなく、商品の先にある『暮らしの豊かさ』『暮らしの楽しさ』を提案しているのです。」「たとえばカラオケでこんな話があります。ある東北の家に嫁いだ若いお嫁さんがいて、当初は姑さんと会話が弾まなかったそうです。その姑さんはとてもカラオケが好きで、それならとご家庭でカラオケ機器を購入されたところ、二人で一緒に歌うようになり、お嫁さんと姑さんの仲がすごく良くなって、今はとても円満だそうです。そういう嬉しい感動を私はどんどん伝えたくなります。」。
時代は既に成熟社会、ハードとしての商品であればどこから買っても同じ、更には既にその商品を所有していて買う必要がないという時代です。その中で必要なのは、その商品で生活がどのように変わるかを伝える事と、操作についてきちんと利用できるところまでサポートする事なのです。もしそこまで行けば、購入者は確実に購入した会社のファンになるでしょう。
ジャパネットたかたは、上記の姿勢をビジネスとして実現するために、素人が購入する際に必要となるであろうものをセットで提供します。(例えばパソコンの場合は、プリンタやデジカメをセット)もちろん、納品はご自宅まで行って組み立て、接続まで行います。
このビジネスモデルの凄さは、家電通販では、ジャパネットたかたの売上が全国No.1であるということです。一見ニッチに見える市場戦略が、これからの巨大市場であるということの示唆です。
どの企業も、成熟社会へ舵取りを行い、自社のビジネスモデルを根本から見直す時期に既に入っていることを証明しています。
※富士通が提供するWEB MART 特選セミナー高田社長の「売れる秘密はここにある」から引用
素人の味方。「ジャパネットたかた」に見るNo.1戦略 この記事は参考になりましたか? |