●税理士 北川 順一
H23年7月1日にH23年分の路線価が公表されました。相続税や贈与税の計算をするときの土地等の評価は、この路線価を基準に計算します。基準日が1月1日と東日本大震災前であるため、指定地域については今秋に「調整率」を公表する予定です。
1. 路線価とは
相続税や贈与税においては、土地等の評価は「時価」により評価するのが原則です。しかし、実際に時価を把握することは容易ではないため、国税局が毎年、全国の民有地について路線価及び評価倍率を公表し、それに基づく評価(路線価方式または倍率方式)を認めています。
路線価方式による土地評価額 = 路線価×面積(㎡)×補正率 |
路線価は、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことであり、国税庁ホームページで確認することができます。
2. 路線価の動向
路線価の平均変動率は全ての都道府県で下落し、全国平均で3.1%下落しました。ただし、31都道府県では下げ幅が前年より減少し、特に東京、大阪、名古屋等の大都市圏では下げ止まりの傾向が出ています。一方で、高知県や徳島県など15県では、下げ幅が拡大しています。
3. 26年連続でトップは 銀座「鳩居堂前」
路線価最高値は、東京都中央区銀座5丁目「鳩居堂」前の銀座中央通りの2200万円/㎡で、26年連続トップです。2007年以降は、交差点を挟み同銀座4丁目の「三越」「和光」前も同額となり、こちらは5年連続トップです。官製はがき1枚分に換算すると32.6万円となります。
4. 震災被害地は 10〜11月に調整率発表予定
路線価の基準日が1月1日であるため、東日本大震災の被災地については、被害に応じて路線価を引下げる「調整率」が今年の10月〜11月に国税庁から公表される予定です(図表1、2参照)。阪神大震災時には、最大25%引下げられましたが、今回は地震だけでなく原発事故による影響もあり、また対象地域の規模も阪神大震災の30倍以上となっています。調整率がでれば、震災後に国が示す初めての地価基準となることもあり、注目されています。
5. 一物四価
土地の価格は、一物四価とも一物五価とも言われています。公的に公表される価格だけでも、路線価、固定資産税路線価、公示地価、基準地価の4つ(四価)があり、これに実勢価格(実際の売買価格)を加えると五価ということになります。もちろんそれぞれに計算の根拠や目的がありますので、その利用には十分ご注意ください。(図表3参照)
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ご自身所有の土地がある場合、相続時にどれくらいの評価になるのか、相続税が課されるのか、等はできるだけ早く把握し、必要に応じて対策を立てることが大切です。路線価による評価は、路線価×面積の単純計算だけでなく、奥行きが長い、間口が狭い、がけ地がある、などの補正率を考慮し、さらに借地権割合や借家権割合なども考慮する場合がありますので、正確な評価は専門家に相談するとして、まずは路線価の把握が第一歩です。