文●マーケティングコンサルタント 中安 康
ザッポス(Zappos)をご存知ですか
ザッポスは、通常では不可能とされるサービスを実施し、世界中から賞賛を浴びています。アメリカ国内だけで靴のネット通販を行い、年間10億ドル以上の売上を上げています。(現在は衣料も扱っています)。楽天の売上が1368億円(2010.12単独決算)ですから単一の分野の売上としてはすごい数字です。しかも靴という人によって同じサイズでも微妙に違う、違和感があると履けない、ネットでは最もふさわしくない商品での売上です。
仕組みとして実施したのは、外で履かないかぎり、いつでも返品OK、返品の送料も無料です。ですから、ネットでみて・・・ちょっといいかなあ・・・というのを10足頼んで、自分に合う1足だけ購入して、あとは返品、ということも送料負担なしで可能です。自分の家であれば、「この服には、この靴」と誰に気を使うこともなく、次々と違う服に着替えて楽しむことが出来ます。
アマゾンがこのビジネスモデルに気が付き、同じく返品OKで、ザッポスよりも安価なネット通販を立ち上げましたが、結果はザッポスの圧勝でした。
ザッポスの凄さ
ザッポスには、購入されたお客さまを最も大切にするという、ザッポスのCEOのトニー・シェイの絶対的な理念がありました。
皆様もご経験があると思いますが、製品に不具合があったとき、電話で問い合わせをしようとしても、何番に電話していいかわからない。ようやく電話番号が解っても、話し中、あるいはテープでしばらくお待ちくださいのメッセージ。ようやく繋がったら、違う番号を案内されて最初からやり直し。BtoCでは、購入客という最も大切なユーザーから逃げる企業がなんと多い事か、唖然とします。これに対してザッポスは、コンタクトセンター(ユーザーコールセンター)を最も重視しました。コンタクトセンターを外部委託や派遣社員ではなく自社の社員で行っています。基本的に、お客様との電話は何分以内に終わる事等のマニュアルは存在しません。何時間話してもOKです。
また、お客様が注文しようとした商品がもし在庫切れだったら、ザッポスのコンタクトセンター社員は、なんと他社のサイトを探して、同じ商品がどのサイトにいくらで売っているのか教えてくれます。
お客様の満足度をとことん高める事こそ、企業発展の要だということを知り、全社員に徹底しています。そこには、トニー・シェイのこんな言葉がありました。「お客さんは、『何をしてくれたか』は覚えていないかもしれない。でも、『どんな気持ちにさせてくれたか』は決して忘れない」。
感動を届ける
単なるコールセンターではなく、「サービスを通じて『ワオ!』という驚きの体験を届ける」。(ザッポス「10のコアバリュー」の1番目)※、お客様に感動をお届けする、そのためのコアバリュー(企業文化)づくりにトニー・シェイは相当な労力を費やしています。
そしてトニー・シェイの象徴的な言葉がこれです。
「顧客サービスをないがしろにする余裕は、僕たちにはない」
今、震災後に逞しく売上を確保する企業があります。その共通点は、まさに既存のお客様に対する徹底したサービスです。もう一度商売の原点に帰ることを、今の大変な状況が教えてくれています。

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