文●株式会社コア取締役/組織開発コンサルタント/公認会計士 蒲池 孝一
語感
「いろんな当たり前が危うい状態におかれている」。そこで、今月の言葉は「転換」。
その意味は、方向、状態を変えること。類語は、変化、変換、改定、スイッチ等々があります。チェンジ、改革もそうです。語感の違いはあっても、意味はみな同じです。
こんな姿になりたいと努力を傾けるのは成長。「変わる」「変える」という語の語感は、成長して定着した後のことを表しています。
何を変えるか?
学校、職業、技術、就職先。研究対象、政策、信心・・・・。友達、恋人。起きる時間、寝る時間。禁煙、断酒、減量。遊び、楽器、趣味嗜好・・・。中には、簡単に変えられるもの、難しいもの、いろいろあります。
政策、重点の置き所、関心事、こういうものを変えるのは難しいものに該当するかもしれません。それは、背後にある自分の生き方やものの観方を変えることでもありますから。
動機
「変える」動機を考えてみると「うまくいかないから」「もう通用しないから」という否定的なものがあります。一方、肯定系とでも言うべきか、今の良い状態をさらに高め、ありたい姿を求めていこうという、積極的なものもあります。
いずれでも「変える」の語感には、良い状態に変えると言う気分を伴っているので、この言葉そのものが(内容を示さなくても)スローガンになり得ます。オバマ氏のチェンジや小泉氏の改革が持つ響きです。
変われないこと
皆さんには「本当は変えたいけど変えていない」ものはありませんか?変えることにチャレンジしても、うまく変えられないという、経験はありませんか?
どうしてそういうことがあるのだろうかと、よくよく反省してみると、自分の心の中に、「変えてその後、何が起こるのだろうか」という不安と、「これまでのものを失うのは寂しい」という気持ちが二つあるということに気づくことはありませんか。でも、もっと嫌なことがあります。変えないその理由・言い訳を探す自分。合理化の自分です。
いやいや、そういう自分こそ変えたい!
変える力は何?
このシリーズで、勇気についてこんなことを書きました。「知によって世の中のことが分かると人の役に立ちたくなる、人の役に立つ仕事から生まれる喜びは恐れを克服する。《知仁勇》の循環があるのだ」と。
しかし、「変える」ということを掘り下げてみると、こう書いたことも虚しいです。もう一皮むいて「知仁勇」を循環させるための力について触れていないからです。
変えることを阻む三つの自分の心、不安・さみしさ・合理化。これらを克服する力はどうしたら得られるのでしょう。
本当の力
是非とも考えてください。自分にとってそれは何か、と。
悩み続けた私にとっては、その答えは「友」でした。皆さんの中には書物だと言う人もいるでしょうし、信仰にそれを求める人もいるでしょう。しかし、私は、それらをまとめて「友」と表現したいのです。
疑問を出してくれるのも、変われない自分を励ましてくれるのも「友」。人間にとって、勇気は、ひとりでに湧いてくるわけではない、人には「同行」(注)が要る。それは、きっと、絶対的に正しい解だと思うのです。
最後に、妻が友でもあるひと、夫が友でもある人は、幸せですね。
※注 同行(どうぎょう)…連れ立って行くこと。また、その人。連れ立って神仏に参詣する人々。(goo辞書より抜粋)
西国巡礼者などがいつも弘法大師と一緒に巡礼しているという意で笠に書きつける語は、同行二人(どうぎょうににん)。キリスト教は主イエスとともに歩くことを特に言う。