文●株式会社コア取締役/組織開発コンサルタント/公認会計士 蒲池 孝一

決断の遅さ
 どう動くか決めるのが遅かったために、取り返しのつかないことになってしまった。今回の震災では、そんな悲しいことがいくつも報道されました。どうして、もっと早く決断できなかったのだろうかと。
 経営学者・実務家は、欧米に比べ日本は「意思決定」が遅いと指摘します(注1)。今、こんな指摘を受けると、とても気持ちが沈んでしまいます。そして、本当にそうなのかと、考えてみたくなります。

決断の遅い理由
 すぐに決められないのは何故でしょう。相手のニーズが分からないと、サービスの仕様の提示ができずに迷います。どのくらいの津波が何分後に来るか分からないと、高台まで逃げるべきか隣の市役所の屋上に逃げるべきか迷います。つまり、何なのか良く分からないこと、前もって考えたことがないことなどは、その意味を即座に評価することができません。ですから、対応がすぐに決められるわけがないのです。すぐに決められるのは、自分が良く知っていることでしょうか。何をしたいかということがはっきりしていることもそうですね。
 つまり、決める前には、自分の頭にある過去の記憶や類推を行って対象を「読む」ということがあります。それが分からないと、周りにいる人とも話をして合点を得ようとします。それが決断の「遅れ」に繋がります。しかし、それは自然なことなのです。

決断を導けない「想定外」とその責任
 科学の進歩、社会関係の複雑さ(注2)や規制などで、今や、一般の人たちには、問題の本当のところが何なのか分からない、ということが数多くあります。だからこそ学者や研究者、専門家の洞察が欲しいのです。
 ところが今回の一連の出来事では、その人達から「想定外」が連発されました。予想もしていなかった、と。では、それは、やむを得なかったことなのでしょうか。
 政治家も企業のトップも、事態のリアリティを直接得ていることは稀です。科学の先端を行く問題、研究の第一線でのこと、利害関係者の多い問題などは1次情報に接しておらず、解釈されたものの上に載って仕事をしています。だから、1次情報を誰が把握するか、それを誰が解釈するか、それをどう伝達するかということはとても大事です。
 今回の事態でいえば、その道の専門家が1次情報を使って真実に迫っていたか、ということです。
 他のことでも、同じ反省はないでしょうか。どこかで、解釈・洞察を投げたり、割り引いたりしていないでしょうか。私たちもある分野では専門家です。自戒を込めて、書いています。途中でサボってしまった、ということはないでしょうか。学者・研究者・実務の専門家は、きちっと1次情報から事態を解釈し、それがどんなことであれ、必要な人に正直に届けるということを日頃から心せねばなりません。
 もう、文明と社会の進歩は、そういうところに来ているのです。 

決断の戦略
 蛇足ながら、決断の戦略を二つ。

⇒最悪を予想して、最高の手を、即座に決断する
⇒事態の推移を読むため、あえて決断を延ばす。
 

災害では、被害を最小にすることが目的ですから、前者。無駄になっても、それを喜ぶ。他方、チャンスを掴むための決定の場合は後者。そのために、我慢も要る。

 あいまいなことをはっきりさせようと、人が集まる、話合う、次第に考えがまとまる、みんなが同意する。そういう行為が、人の組織としてまとまることの意味で、とても大事だと思うのです。
 まだまだ書き切れていません。
 皆さんも、意思決定の遅いこと速いことを巡って、是非、会社で議論をしてみてください。

※注1 前グーグル日本法人の社長=辻野晃一郎さんは、組織が複雑、現場とトップとの間が長い、信頼感のないおごりの問題だ、と指摘しています。(朝日新聞2011年6月4日13面)

※注2 お互いの依存関係が分からぬほど入り組んでいて、規制の網はとても広範にかつ複雑です。 

エールパートナーズ会計発行:成長企業のための情報誌「グローイングカンパニー」

  2011年7月号(VOL 132)より  

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