●税理士 北川 順一
遺言が必要かどうかは、ご本人が決めることだと思いますが、少なくとも遺言がどのようなものなのかを認識することが、その意思決定の第一歩です。今回は、遺言に関する入門部分を説明します。
1. 遺言とは
遺言とは、一般的には「死後のために言い残しておくこと。または、その言葉」1と定義されていますが、民法上での遺言は、死後の法律関係を定めるための最終意思の表示ととらえています。
相続が発生したときに、遺言があればこれに従って遺産を分けることになります2が、遺言がない場合には、法定相続人が協議して決定することになります。
2. 遺言でできること
遺言できる事項は、財産の相続に関する事項が中心ですが、それだけではなく、以下の事項が遺言できます。
自分が何を遺言したいのか、それは遺言することで実現するのか、別の方法はないのか、を慎重に検討する必要があります。
1. 【身分上の事項】
子の認知3。未成年者の後見人の指定。後見監督人の指定。
2. 【相続に関する事項】
推定相続人の廃除、廃除の取消。相続分の指定、及び指定の委託。特別受益の持ち戻しの免除。遺産分割の方法の指定、及び指定の委託。遺産分割の禁止。遺産分割された財産について相続人同士で担保責任を負わせること。遺贈の減殺の順序、及び割合の指定。
3. 【遺産処分に関する事項】
遺贈。財団法人設立のための寄附行為。信託の指定。
4. 【遺言執行に関する事項】
遺言執行者の指定、及び指定の委託。遺言執行者の職務内容の指定。
5. 【その他】
祭祀承継者の指定。生命保険金受取人の指定、及び変更。遺言の取消。
3. 遺言の仕方
法律行為としての遺言ですので、一定の厳密な要件を満たしていないと無効となってしまいます。「言った」、「言わない」の話では法的に通用しません。
遺言の仕方としては、普通方式と特別方式に分けられますが、法的要件を満たす遺言をお望みなら、普通方式の公正証書遺言をお勧めします。(図表2参照)
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図表1のケースでも、遺言が唯一無二の手段ではないケースも多々あります。生前に解決したいこともあるでしょう。事業継承など遺言だけでは解決できないケースもあります。本稿を諸々の問題を考えるキッカケとして、是非、早めに専門家にご相談下さい。早ければ早いほど、解決の方法や結論の選択肢が多くなります。
1: 大辞泉を参照した。 2: すべて遺言の通りに遺産分割されるわけではなく、法的制限事項等により変更される場合もある。