契約書に貼付する印紙税。契約金額が1円違うだけで、印紙税が20万円違うことがあります。税務の世界では、1円の違いにより、印紙税の金額、特例適用の可否、損金計上の可否などが判定されるのです。その判定が、税込金額で行われるのか、税抜金額で行われるのか。消費税※は、意外とその判定に大きく影響しています。
1. 印紙税と消費税
建築工事の請負契約書などは、その文書の記載金額に応じて印紙税が課税されます。その記載金額は、原則として消費税込みの税込金額とされています。ただし、図表2の文書について、その取引に係る消費税が明らかである場合には、税抜金額を記載金額として判定することとしています。
たとえば、契約書に請負金額が52.5億円と税込金額のみの記載であれば印紙税は60万円となり、総額52.5億円・消費税2.5億円・税抜価格50億円との記載であれば印紙税は40万円となります。同じ取引に関する契約書でも、金額の記載方法によっては、印紙税が20万円も違ってしまいます。
契約書には、その取引に係る消費税を記載した方が明らかに有利ですね。
2. 源泉所得税と消費税
弁護士や税理士などに支払う報酬は、原則として支払金額の全額(=税込金額)が源泉徴収の対象となります。ただし、弁護士等からの請求書等に、報酬等の金額と消費税の金額が明確に区分されている場合には、税抜金額を源泉徴収の対象としても良いことになっています。
たとえば、請求書に弁護士報酬21万円とのみ記載されている場合には報酬21万円の10%の21,000円が源泉徴収する金額となり、報酬20万円・消費税1万円と明確に区分されている場合には報酬20万円の10%の2万円が源泉徴収額となります。
手取金額を決めて報酬を支払う場合の請求書や領収書には、報酬額と消費税を明確に区分して記載した方が、法人が負担する総額は有利となります。(参照:図表3)
3. 法人税と消費税
法人が交際費等の損金不算入額を算出する場合における消費税の取扱いは、その法人が選択した経理処理の方法に応じて区分されます。
すなわち、法人税法上の金額基準等については、税抜経理方式を選択していれば税抜金額により判定し、税込処理方式を選択している場合には消費税を含んだ金額で判定します。(参照:図表1)おしなべて、税抜処理方式の方が有利です。
なお、課税売上割合が95%未満で、仕入税額控除できなかった消費税等がある場合には、税抜きの交際費の金額に交際費に係る控除対象外消費税額等を加算した金額を交際費等の額として、損金不算入額を計算します。
4. 所得税と消費税
所得税法上の金額基準等の判定は、法人税と同様に、消費税等の経理処理方法に応じて区分されるものと、経理処理方法とは関係なく判定されるものに、分かれます。事業所得の計算上の判定は、経理処理方法に応じて区分され、それ以外は経理処理方法の関係なく項目ごとに原則が定められています。(参照:図表1)
以上、消費税とその他の税との関係について主な項目を説明しました。経理方法としては税抜処理方式を選択した方が有利ですし、経理処理方法に関係なく金額判定する場合にも、契約書や請求書に消費税を明記した方が有利なことをご理解いただき、実務上に反映していただければと思います。
※正しくは消費税等(消費税及び地方消費税)ですが、本文中は、簡易的に消費税と表示しています。