モノを販売する時に、「顧客ニーズを把握しなさい」あるいは、「お客様の声を聞きなさい」、「お客様の困りごとを聞きなさい」ということが言われます。もちろんそうなのですが、肝心な事が抜けています。それは、あなたの会社を支えていただいているお客様が、何故あなたの会社のお客様になったのか、そして、なぜ今も続いているのか、をきちんと把握しているかどうかなのです。
販促コンサルタントの岡本達彦氏が著書の中で「昔の魚屋さんや八百屋さんは、接客のなかで自然にお客様の気持ちを拾い集め、その情報をごく自然に販促活動に活かしていました。ところが大量生産、大量消費の時代になり、個別のお客様の気持ちを拾い集めるよりも、平均的なお客様のモデルケースを想定して体制を整えた方が、効率が良いということになりました。」と語っていますが、その通りです。目の前のお客さんに向き合わずに、モデルケースという架空の顧客と向き合う姿は滑稽としか言いようがありません。
では、どうすればよいか?
答えは簡単です。購入されたお客様に、何故あなたの会社の商品を選んだのかを聞く事です。
先ほどの岡本氏は、アンケートによるヒアリングの質問項目に、下記の5つを挙げています。
満足度調査ではなく、購入されるまでのドラマを取材するのです。
1 購入して頂く以前の悩み、欲求、不安
2 接触したきっかけ
3 選んで頂くまでの躊躇
4 何故選んで頂いたのか
5 購入して頂いた後の満足や不満
上記の事をアンケート形式で記入して頂きます。
そこには提供企業側の思い込みや勘違いは入りません。あるのは、お客様の購入に至るまでの葛藤を含めたプロセスです。この情報は、チラシやDM、ホームページに生かす時の宝物となります。
更には、自分では気がつかない自社の長所もお客様が教えてくれるのです。
これからの時代は、単なるモノ売りや価格競争だけでは競合に勝てないと言われています。では、いままではそうだったのか?決してそんなことはありません。利益を出すために、価格競争以外のことを山ほどやっているはずです。
そのプロセスが購入されたお客様の行動に残されているのです。
例えば、ある不動産業の事例です。皆様も「ご売却の相談は○○へ」といったチラシは、見た事があると思います。残念ながら反響は非常に低い状況です。そこで岡本氏のアドバイスで数少ない契約客へアンケートを行います。するとお客様のほとんどは不動産を売却するのは初めてで、自分の納得した価格で売却できるかどうか不安という声が寄せられました。そこで、キャッチコピーが変わります。「自宅や土地を売ろうと思っている方へ!! 納得の価格で売れるか悩んでいませんか?」。結果は大成功で無料査定の依頼が殺到します。もちろん、キャッチコピーで投げかけた受け皿として、企業の実績、信頼、安心が盛り込まれています。それもアンケートからの情報が基本です。
最初のうちは、アンケートの中にこうした宝物は見出すことはそれほど多くはありません。書かれた内容は抽象的な表現であったり、具体性に乏しかったりします。それでも、これは!といった回答があります。そういった回答から属性を判断し、チラシやホームページを作成します。そして、改善したチラシやホームページによって販売の精度が上がります。そうすると、販促そして経営が面白くなってきます。先が見えてくれば、あなたの経営者魂に火が付きます。好循環の始まりです。
詳しくは、岡本達彦氏の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)をご参考ください。売上拡大の単なるハウツー書ではありません。非常に理にかなったマーケティングの書です。アンケート情報に基づいてチラシ作りの方法まで親切に解説しています。