文●税理士 北川 順一
サラリーマンの多くは年末調整によって所得税額が確定し納税も完了しますが、2000万円を超える給与を受けている人や、給与以外の所得がある人は、所得税の確定申告をする必要があります。今回は、どのような所得に課税され、確定申告する必要があるのかについて見てみましょう。
1. 年金にも課税されます！
年金には税金がかからないと思われている方は少なくありませんが、実際には、雑所得等として所得税の課税対象になっています。年金に関係して『公的年金等の源泉徴収票』又は『支払調書』等がお手元に届いたら、確定申告が必要かもしれませんので、必ずご確認下さい。（図表1の太枠内の部分が課税対象です。）
2. 年金の種類と所得の計算式
年金は、公的年金と個人年金の2つに区分され、さらに公的年金は5つ（国民年金、厚生年金、共済年金、恩給、企業年金）、個人年金は3つ（生命保険年金、生命共済年金、互助年金）に区分されます。（図表1参照）
公的年金も個人年金も原則は「雑所得」の所得区分となりますが、所得の計算方法が違います。
個人年金は、他の雑所得と同様に、
収入金額−必要経費＝所得金額
の算式にて計算します。収入金額や必要経費は保険会社等から送付される『支払調書』等に記載されています。
公的年金は、通常の雑所得の計算式ではなく、図表2の算式に従い計算します。給与所得控除の年金収入版です。
これらの算式により計算された雑所得に、他の所得があればそれらを合算した上で、所得税の計算をすることになります。
3. 非課税の年金
所得税がかからない年金もあります。遺族年金、障害年金、母子年金（継続分のみ）の3つです。もちろんこの分は確定申告の必要はありません。
4. 所得控除の留意点
年金受給者が確定申告する場合に、所得控除の中で、特に留意すべき点を以下に記載しましたので、ご確認下さい。
■医療費控除：医療費が10万円又は総所得金額の5%を超える場合に適用できるので、総所得金額が200万円未満の方は、要注意です。総所得金額が150万円なら基準は10万円ではなく7.5万円ということです。
■社会保険料控除：個人の年金から控除されている保険料があります。長寿医療保険料や介護保険料の控除もれに要注意です。
■寡婦/寡夫控除：夫または妻と死別してから再婚していない方は適用の可能性があります。要件を確認し、適用漏れに要注意です。
■配偶者控除：年金収入だけの配偶者で65歳以上なら年金収入158万円以下、65歳未満なら108万円以下で配偶者控除を受けられます。
■扶養控除：年金収入だけの扶養親族（両親等）で65歳以上なら年金収入158万円以下、65歳未満なら108万円以下で扶養控除を受けられます。
本冊子をお読みになるころには、公的年金等の源泉徴収票や支払調書は既にお手元に届いている時期です。源泉徴収されている所得税があれば、還付される可能性もあります。ご不明の点、ご不安な点等は税理士等の専門家にご相談下さい。
