文●株式会社コア取締役/組織開発コンサルタント/公認会計士 蒲池 孝一

 差別化戦略
 「区別」と「差別」という言葉が気になる、と本誌、編集委員からヒントを貰って、今回はこの「差別」をテーマにしました。
 マーケティング用語に「差別化」戦略(注1)がありますが、「差別化」でなく「差異化」を使うと言った、有名な経済学者がいました。差別という言葉が差別用語だ、という理由でしょうか。なんだか変ですね。
 辞書には、差別の第一の意味は「比較される双方に構造(形態)上明らかに認められる区別」で、そこから第二の意味として「優越感を味わおうとしての偏見に基づいて、自分より弱い立場にある人間や何らかの不利な条件を負っている人に、不当に低い待遇を強いること」という使い方が出てきたとあり、区別は(複数の)「ものの間にある特徴の違い(によってそれらを分けること)」とあります(注2)。
 区別は平面的な「区分け」。差別は上下の「区分け」で、優れているか劣っているかという「尺度」が先に存在するということです。そして、その尺度は、する側の心の中にあるのです。
 マーケティング用語の「差別化」は、商品の特徴づけをする戦略で、営利活動であるマーケティングの真髄をよくあらわしています。その特徴づけによって優劣の差をユーザーに感じ取ってもらおうとすることで、差別という言葉の使い方としては当たっている適切な言葉(翻訳)だと私は思うのですが・・・。

よそ者扱い
 その対象が人であったときはどうでしょう。
 尺度が少数の人の心にあるだけでなく、社会に広がっていくと、それは社会全体の常識となります。安全でいたいと思うのは人の本能ですから、なんらかの尺度を持ち込み自分たちを囲い込みます。よそ者扱いされるのを避けるためよそ者を作るのです。子供たちの「いじめ」もこれです。子供たちは成長するにつれ、属していた社会=組織から離れ、別の組織に移っていきますから、いつの間にかその尺度は働かなくなります。ところが、より上位の大集団(国、民族や人種・・)からは離れられないから、その大集団が持つ尺度=常識によるよそ者扱いは長い間続きます(注3)。
 さて、その尺度によって差別された人々はどう感じるでしょう。不愉快になり、時には心身に耐えがたく、生死の問題につながることがあります。悲しみと憤りを抱きます。愚かな偏見によって差別され、その結果の悲しい例はいくつもありますね。

尺度=常識が変わる時
 差別に対抗する戦いは、ナショナリズムの戦いから子供たちのいじめまで、時には英雄的ですが、悲しく、無くなってもらいたいものです。 
 差別が無くなるのは、差別する側の尺度=常識が変化する時です。それまで信じていた尺度も外部環境の変化が続くと、やがて説明力や適合力を失います。意味をなさないことが分かってくるのです。新常識にとって代わられるわけです。
 このように考えてくると、差別という言葉を隠すのではなく、いくつもの差別の尺度の由来を改めて考えなおしてみることが、私たちにとってとても大事だと思うのです(注4)。そうしてこそ、世の中の差別が、区別になっていくのではないでしょうか。

※注1  マイケルポーター が提唱した経営戦略。邦題「競争戦略論」ダイヤモンド社
※注2 「新明解国語辞典第5版」1997年11月三省堂
※注3 差別ということをこのように考えてくると、「ナショナリズム」に考えが及びます。いつか本誌でも、「ナショナリズム」または「国益」ということについて考えてみたいと思います。
※注4 社会的差別をなくそうと制度を作っても人々の心の中にその尺度があるかぎりなくならないし、逆に、陰湿になりますね。
 

エールパートナーズ会計発行:成長企業のための情報誌「グローイングカンパニー」

2010年12月号(VOL 125)より

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