文●マーケティングコンサルタント 中安 康
「食」でまちおこしをしようとしている、団体や地方自治体が「ご当地B級グルメ」を持ち寄り、その人気を競う大会が「B−1グランプリ」です。安くて旨くて地元の人に愛されている地域の名物料理の日本一を決めようと始まりました。 第1回は2006年(平成18年)2月に「八戸せんべい汁研究所」の企画によって、青森県八戸市で開催され、参加したのはわずか10団体、来場者は、1万7千人でした。
大きな経済効果で注目
その第1回に、優勝したのが富士宮の「富士宮やきそば」。1、2回大会を連覇したことで、年間100万人が来る一躍全国区の観光地になりました。
その経済効果はあっという間に全国に伝わり、メディアにもB−1グランプリを積極的に取り上げられ、注目を集めるようになりました。
昨年の開催地、秋田県横手市では、大会期間中で、来場者の宿泊費等合わせて約13億円。これに「横手やきそば」が優勝したことにより、横手市のそば店への来店者増などによる効果は8カ月間で約34億円に上ったとされています。しかも、優勝すると殿堂入りし、更に人気に拍車がかかり、今回の大会でも「横手やきそば」は、初日の昼過ぎには、完売御礼が出ました。殿堂入りするとその人気は不動のものになる、といった感じです。
今年(9月18,19日)は、2008年「厚木シロコロ・ホルモン」で優勝した神奈川県厚木市で開催され、初の関東開催ということもあり、最多の46団体が参加しました。食事チケットの前売り引換券は完売し、来場者数も、予想を超える過去最高の43万人となりました。沿線の小田急電鉄は臨時ロマンスカー「B−1グランプリ号」を運行するほどで、厚木大会の経済効果は期間中で60億円以上との試算がでています。
まちおこしにお金がかからない
これまで、それぞれの地方では、様々な文化施設を作ったり、商店街を整備したり、随分と箱物に投資をしていきました。しかし、「B−1グランプリ」はハードの投資を全く必要としません。必要なのは、町の人々の情熱と実行力だけです。古くから、その町ならではのB級グルメを持つ町は、その味に更に磨きをかけ、ない町は新たに作って参戦することが可能です。
衣食住の「食」は毎日消費するものです。地域活性化のための最大のキーであり、競争することで、その味に更に磨きがかかります(年一回の勝負の舞台があることが重要です)。
今回もお客様の数をさばくため、作りたてではなく、作り置きしたものを出すところがありましたが、明らかに味が落ちていました。評価者として来場している方々は、そのわずかな差を見逃しません。すぐ修正したとのことで、ほっとしましたが、出展者も来場者も真剣勝負です。
会場は、町をあげての応援合戦です。市長や地元の代議士も駆けつけます。小泉進次郎氏も神奈川県三浦市の「三崎まぐろラーメン」の応援に駆けつけていました。 地方の活性化の方法は、いくらでもありますが、今回の事例は、真剣な他流試合を競うことで、地元の人たちが一丸となって勝つための活動をし、結果として、ご当地B級グルメのレベルを上げ、町への集客を加速させるという好循環を生み始めています。