文●マーケティングコンサルタント 中安 康
中国人向け個人観光ビザの発給要件が7月1日に緩和されました。「観光庁は7月28日、中国人の個人観光客に対するビザの発給件数が、7月1日から23日までで5836件になったと明らかにしました。去年7月の1か月間での発給件数は1033件で、この時点で既に5倍以上になっている。」(日テレニュース7/28)これまでは年収25万元以上(約312万5000円)の富裕層に限られていましたが、年収6万元以上(約75万円)の中間層にまで対象が拡大し、今後、中国人観光者が激増することが予想されます。 世界では、「観光」は、国にとって巨大なビジネスなのですが、日本ではまだまだそこまでの意識がありません。
日本は、「観光」後進国
日本への外国人訪問者数は、2008年実績の数字ですが、グラフ1のように、世界28位。日本が「観光」に対してどんなに遅れているかがわかります。
【グラフ1】世界各国・地域への外国人訪問者数(2008年 上位40位)

2008年の世界の国際観光客到着数は、9億2,181万人(前年度比1.9%増)、国際観光収入は9,444億米ドル(前年度比10.2%増)となっています。世界観光機関(UNWTO)の予測では、到着客数は2020年までに16億人に達するとしています。多くの国で、国際観光収入が重要な外貨収入源となっており、観光はどこの国においても期待される産業となっています。世界旅行産業会議(WTTC)による予想では、2009年度には全世界の関連産業、関連投資、税収を含む観光産業の経済規模(総生産)は世界の国内総生産(GDP)の約9.4%に相当する5兆4,740億米ドルに達する見込みであるとしています。(出典・参考文献:日本政府観光局(JNTO)国際観光白書2009年版)
国内に居ても国際感覚を求められる
そうした中で、今回の隣国中国への発給要件の緩和によって、観光で来日可能な人が従来の10倍、世帯主ベースで1600万人になると言われており、中国人観光客の動向には注目です。
このことは、観光目的だけでなく、投資であったり、ビジネスであったり、あらゆる日本の経済や商売を根底から変える可能性があるということを意味しています。
今までは、国際化と声高に言われても、日本にいる限りは、ほぼ日本人だけに囲まれていた生活が、大きく変わる可能性を持っています。
例えば、日本人が考える日本の良さと、海外の人が魅力と感じることは全く違います。ビジネスの現場では、「今までと違う視点を持て」と言われながら、それほど熱心ではありませんでした。しかし、これからは世界が一つであることを、良くも悪くも意識せざるを得ない時代に突入しました。「今までと違う視点」を持つことが必要です。
世界を知り、日本を知る
「今までと違う視点」とは、世界のルールを充分に習得することと、各国のそれぞれの政治、経済、国民性、文化を深く知ることです。例えば、日本のような島国でなく、大陸で国同士が接していることが、日本とどれほど大きな違いか、を何人の人が知っているでしょうか?
また、同時に、日本の魅力を知ることです。
日本は、森林が国土の60%で、四方を海に囲まれた、多くの島がある島国です。また、300年もの間、鎖国を行った国です。世界には知られていない、魅力的な要素が詰まっている国であることを、きちんと振り返るチャンスかもしれません。
「敵を知り、己を知らば、百戦危うからず」という言葉、世界を敵の字に当てはめるのは、適当ではありませんが、「海外の国々との違い」と「世界における日本の良さ」をしっかりと把握する必要があります。