文●マーケティングコンサルタント 中安 康
今では、街中いたるところで見かけるコインパーキング「Times 24h」(写真参照)、この運営会社が「パーク24株式会社」です。昔からあるコインパーキングを運営する会社の一つですが、今期、連結売上が1000億(見込み)を突破するまでに成長しています。100円玉を入れて借りるという以前からあるコインパーキングビジネスが、何故ここまで成長したのでしょうか?
従来の駐車場ビジネスは、不動産ビジネスです。遊休地や空き地を生かすために、所有者から受託した土地を不動産屋さんが管理し運営するのが一般的でした。ところがパーク24は、駐車場ビジネスは不動産ビジネスではない!コンビニエンスストアと同じ多店舗展開できるサービス業!という定義のもとに事業を推進します。
サービス業の基本に忠実に
店舗である駐車場は無人のため、放っておくとあっという間にごみがたまり、機器が壊されたりします。また駐車しづらい区割り、隣の区画と接近しているため敬遠される等、様々な問題がありました。当然利用者(以下、お客様)は減っていきます。パーク24は店舗のレベルを維持するため、保守点検、清掃、24時間緊急対応(遠隔監視)を行います。また所有者との契約時には、お客様に気持ち良く利用して頂くため、スペースの確保(8台入るところを7台にする)と導線をつくります。また、利用促進のための看板の位置や向き、高さ等、きめの細かいお客様目線での店舗の組み立てによって、従来の不動産ビジネスからの脱却を行いました。
バックボーンのシステム力が必須
次に行ったのが、当時(平成12年)、純利益が20億の時に40億のシステム投資を行う決定をしたことです。それは、加速度的に増える駐車場の管理台数がきっかけでした。全駐車場のそれぞれの駐車スペースの空き状況や稼働時間、売上等々を全て把握し、タイムリーな対応に役立てます。これが「TONIC」(Times Online Network & Information Center)というシステムです。更にお客様へNAVIやWEBを通じてリアルタイムで提供する満車空車の情報になり、顧客の利便性が飛躍的に増していきます。このほか、今ではカードによる決済(個人&法人向け)、利用の度に貯まるポイントサービス、柔軟な価格対応等、100円玉を用意しないと精算できない時代と比較すると隔世の感があります。
経営資源の無駄を指摘し所有者と契約
一等地にありながら、休日には利用されていない銀行の駐車場、存在を知られていないために利用されていない駐車場、使い勝手が悪いため利用率の低い駐車場、所有者が気づかない経営資源の無駄があります。私も以前は、休日駐車場を探すのに苦労している時、なぜ銀行の駐車場があるのに開放しないのか不思議に思ったものです。パーク24はその無駄を指摘し利用率を大幅に向上させます。
取得した経営資源を徹底利用する
一旦借りた土地に様々なビジネスをオンしていきます。
電気自動車時代をにらんだ「パーク&チャージ」。ガソリンから電気の時代になると、充電は車のスペースだけで可能、設備をプラスするだけで駐車場が充電所に変身します。
鉄道会社と連携した「パーク&ライド」。車が集中するエリアの手前のエリアで駐車し、電車に乗ることで駐車料金を割引するシステムです。車が集中するエリアの混雑緩和にもなりますし、周辺の駐車場の利用促進にもなります。
以上の事から見えるのは、自社の経営資源をサービスという面から多面的に分析すると、実はいくらでもビジネスチャンスがある事です。
パーク24のケースは、自動車&駐車場という関係に「人」という要素を入れてみると、様々な困り事の解決シーンが見えてきます。それを一つ一つビジネス化することで、大きな果実を得ています。
今、現業を「人」と「サービス」いう側面から見直すと、意外なビジネスが見えてくるかもしれません。