文●人材開発室 田嶋 雅代
江戸の人たちは人間関係を円滑にするためのさまざまな知恵「江戸しぐさ」を持っていました。
例えば、こんなものは嫌われます。
時間泥棒
突然押しかけて、相手の都合に関わりなく勝手に時間を奪うことをいいます。金銭は借りても後で返せますが、過ぎた時間は取り返しがつきません。訪問の際は事前に了承を得ておく、電話をかける際には「少しお時間いただけますか」と断りを入れることが相手への配慮です。約束の時間に遅刻するような人は「何においてもいい加減な人」と判断されかねません。
戸締め言葉
相手が返事に窮し、その先の会話が続かなくなるような言葉を指します。何気なく口にした一言だったとしても、その会話がそこで途切れては、それ以上何の発展もありません。「しかし、そうは言っても…」といった言葉は自分の主張を通そうとするばかりで、相手の意見を聞き入れる気持ちの余裕がないことの表れです。
忙しい
「忙」、漢字を分解すると心を亡くすと書きます。心を重んじた江戸っ子にとって、心を亡くしたのでは人間扱いされません。このため「忙しそうですね」とは言わず、「ご多用中のところ…」と言い換えます。
庶民が豊かで商人を中心とした町人文化が栄えた江戸の町には、参勤交代により慣習の違う地方の武士も長期滞在していました。江戸しぐさには狭い江戸の町で、多様な文化的背景を持つ皆が円満に生き生きと暮らす(共生と相互扶助)ための知恵があります。お互いの生きる営みのために他者との衝突を避け、できればお互いの繁栄に結びつけばいいという知恵は今日の私たちにとっても参考となります。(監修:ビジネスマナー講師 八巻 惠子)
エールパートナーズ会計発行:成長企業のための情報誌「グローイングカンパニー」
2010年5月号(VOL 118)より
グローイングカンパニー詳細についてはこちら