文●マーケティングコンサルタント 中安 康
アメリカ合衆国テキサス州ダラス市を本拠地として、1971年にわずか3機のボーイング737機でスタートし、アメリカの航空業界に革命をもたらした格安航空会社。 2009年12月、米求人サイトのグラスドア・ドットコム(Glassdoor.com)が実施した調査でも、サウスウエスト航空が、今年の最も働きたい会社に選ばれた。
Wikipediaからの引用
同社のポリシーとして「顧客第二主義」「従業員の満足(Employee Satisfaction)第一主義」を掲げる。「従業員を満足させることで、却って従業員自らが顧客に最高の満足を提供する」という経営哲学を追求することにより、実際に高い顧客満足度を得ている。
「乗客に空の旅を楽しんでもらう」ことを従業員に推奨しており、出発前に客室乗務員によるパフォーマンスがあったりするなど、特異な経営方針を持つ。日本の航空会社では考えられないことであり、賛否両論あるようだが、おおむねジョークとして受け入れられている。そもそもアメリカの航空会社においては、乗務員の態度はおおむねフランクである土壌があるが、その中でも同社従業員は目立つ存在である。また、従業員の採用に際して、ユーモアのセンスがあることを重要視するという。
格安航空会社には「給料が安い」「整備が不安」などのイメージがありますが、サウスウエスト航空では給料以外のコストを徹底的に削ることでカバーしています。それは従業員第一主義の実証でもあります。
その原動力になったのが、1971年運行開始をめぐってライバル会社からの執拗な運行阻止にあい、4機の内の1機を手放したことでした。3機で4機分の運行をせざるを得ない事態に陥りましたが、従業員の全面支援により、後にこの会社自慢となる迅速な折り返し運行が始まります。この不屈精神が永年勤務している社員に脈々と生き、この精神を失わないようにするため、従業員第一と徹底したコスト意識の教育に力を入れています。
コスト面では、座席指定がない、ファーストクラスがない、機内食がない、航空券がないというように、余分なコストを掛けずに航空代を安くしています。また、機種は「乗員はボーイング737を理解すれば、会社の機材全てを理解したことになる」という観点からボーイング737に統一し、整備コスト・教育コストの低減を図っています。
その代わり、お客様に徹底的に楽しんでもらう。お客様が搭乗しているときに利益を生むという考えで、様々な楽しさの演出を常に考え実践しています。まるでそれは田舎の乗り合いバスのように、みんな以前からの知り合いのように、乗客を笑いの渦に引き込んでいきます。筆者も以前、アメリカ国内の移動で搭乗するはずのユナイティッド航空が遅れたため、急遽サウスウエスト航空に搭乗したことがあります。ところが、飛行機が滑走路まで行ったと思ったら急に引き返しました。何事が起きたのかと思ったら、客室乗務員を乗せ忘れたので引き返すと言うアナウンスです。これでどっと笑いが起きました。引き返すと、客室乗務員がまるで女優のように手を振って登場しました。もう拍手喝さいです。更にアナウンス「ユナティッド航空から乗り換えた方へ、隣の滑走路をご覧ください。今、あなたがたの飛行機が飛び立ちました。残念!」笑いの渦です。
サウスウエスト航空には3つの基本的価値観があります。
1. 仕事は面白くあること。仕事は遊びである。楽しもう。
2. 仕事は大切だ。深刻、生真面目になってはダメ。
3. 社員は宝。かけがえのない社員。
日本でも、法政大学大学院の坂本光司教授が著書「日本でいちばん大切にしたい会社」で、「会社は顧客のためのものでも、まして株主のためのものでもない。社員が喜びを感じ、幸福になれて初めて顧客に喜びを提供することができる。顧客に喜びを提供できて初めて収益が上がり、株主を幸福にすることができる。」と語っています。
大変な時期だからこそ会社は誰のため、何のためかを真剣に考える必要がありそうです。