文●代表 宍戸賢輔(公認会計士・税理士・MBA)
■助け舟
当コラムの昨年十一月号で「現在の経済政策は有効か」と題して次のように書きました。
「(前略)民主党の政策も無駄の削減以外は子ども手当、農家の所得補償、高速道路無料化、時給一〇〇〇円法制化など「バラマキ」的政策が多く、将来の国家ビジョンやどうして富を創造するのか、という点が見えてきません。これを明確にすることが重要でしょう。バラマキも、富があればこそできることだと思うのです 」として財源の確保に疑問を呈しています(傍線筆者)。
やはりというべきか、12月17日、政権交代九十二日目にして、大きな政策(理念)変更が、民主党から内閣への要望という形をとって、提示されました。
最大の変更点を抜粋すると
1、子ども手当※1に所得制限※2を設けること
2、道路特定財源の暫定税率※3を廃止から、維持する方向に180度転換したことでしょう。
これは、手詰まり感のあった内閣の予算編成に、党が「助け舟」を出したという見方もできます。
■ 竜頭蛇尾
この二つは、先の総選挙での民主党の看板政策であったはずです。
子ども手当は、「社会全体で子どもを育てる」という理念の表明であり、そして「暫定税率の廃止」は「コンクリートから人へ」という理念の発現でした。
従って、この変更は、政治理念の大転換といえるでしょう。はじめの勢いが良く終りはさっぱり振わなくなるこのようなさまを「竜頭蛇尾」というのでしょう。
■ ない袖は振れぬ
子ども手当の所得制限については、もし二千万円程度とすると、該当者は1%〜1.5%程度という予測されるそうです。これだとほとんど財源確保という働きは期待できません。
その金額が八〇〇万であれば、単なる所得再配分であり、理念としては大後退することになります。
一方で財源確保のために相続税や所得税の増税策が議論されてもいます。
やはり「ない袖は振れない」のです。
※1:子ども一人当たり、月26000円支給。初年度を半額としているが、それでも2兆3千億円規模となる。
※2:所得制限としては、2000万円や800万円など、まだまだ不透明。
※3:当初は2兆5千億円の減税を予定していた。
エールパートナーズ会計発行:成長企業のための情報誌「グローイングカンパニー」
2010年1月号(VOL 114)より
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