文●税理士 北川 順一
所得税は、原則としてその人に帰属するすべての所得に対して課税されますが、社会政策や課税技術の観点から、特定所得については課税されません。この課税されない所得を非課税所得と言います。
非課税所得は、当然、確定申告の必要がありませんので、きちんと把握しておきましょう。
1. 所得の範囲は法律に定められていない
租税法定主義と言いながら、実は、所得税法上、いわゆる「所得」の範囲については、特段の定めがありません。「所得」とは、その発生原因にかかわらず、その者の経済力の増加をもたらすあらゆる経済的利益をいうものと解されています。
所得税法上、所得の種類を10区分していますが、例示列挙であり、10番目の区分である雑所得には他の9区分に含まれない所得をすべて含んで、確定申告しなければなりません。
2. 非課税所得は法律で定められている
原則として、所得税はすべての所得に対して課税されますが、社会政策的立場や課税技術上の要請から、特定の所得は非課税とされています。
非課税所得は、所得税法等のほか、健康保険法、厚生年金保険法、当せん金付証票法などの法律に定められており、法律や条約等に定められていない非課税所得はありません。
3. 宝くじに当たったら・・・・
年末ジャンボは一等前後賞合わせて3億円。totoBIGは最高6億円。夢の宝くじ等に当たった場合、所得税も住民税もかかりません。年末ジャンボは「当せん金付証票法」、totoBIGは「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」という法律に基づき、非課税となっています。
宝くじ等に当たった後、不動産などの高額な買い物をした場合に、税務署からその資金の出所についての「お尋ね」が来る可能性があります。念のため、「当選証明書」を入手しておきましょう。
なお、懸賞やクイズ番組、福引などの当選金は、一時所得として課税対象となりますので、ご注意下さい。
4. サラリーマンの非課税所得
サラリーマンは、職務上いろいろな給付を受けますが、その多くは非課税となっています。非課税となる給付としては、通勤手当(月10万円まで)、制服や食費等の現物給付、住宅取得資金の低利貸付や住宅ローン金利の補助、慶弔関係の祝い金や香典、宿直手当(1回4千円まで)などがあり、これらは年末調整はもちろん、確定申告の必要もありません。
ただし、通勤手当のように所得税の非課税所得でも、社会保険料の算定上は所得として計算する場合もあります。
5. 失業給付金は非課税所得だが社会保険の扶養には入れない
雇用保険法により支給される失業等給付は、同法第12条により、所得税は非課税となります。しかし、社会保険の扶養の判定上は、失業給付も収入とみなされますので、失業中でも社会保険の扶養には入れません。
6. いつまでも非課税というわけではない
非課税所得は、すべて法律等に定められていますので、永久に非課税というわけではありません。法律が変われば、非課税でなくなるもの、非課税となるものが生じるのは止むを得ません。
所得税の確定申告では、その人の1月から12月までのすべての所得を対象とすることが原則となっていますが、課税対象とすることが適当でないとして、所得税の非課税所得が法定されています。よく確認したうえで確定申告を行わないと、無駄な税金を負担することになります。
主な非課税所得については【図表1】にまとめましたので、ぜひご参照下さい。
【図表1】主な所得税の非課税所得
所得税の非課税所得の主なものを掲載します。適用要件や例外要件等がありますので、詳細は専門家等に確認の上、ご判断下さい。
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