文●マーケティングコンサルタント 中安 康
従来型のビジネス(先進国における高度成長型)の行き詰まりの問題をなんとか先送りするための「虚」の構築(ヘッジファンドやサブプライムローン)と崩壊、そのことを看破したオバマとそのブレーンが、過去の責任を問わず、新しい時代のフレームを構築する決意をしました。その表明が今回の大統領就任演説です。 今回のオバマ大統領の登場は、その仕事が成功するかどうかではなく、「人類の新しい価値の枠組みのスタート」ということで非常に大きな意味のあることです。それは、大統領就任演説にあらわれています。
「いま求められているのはこうした真理※に立ち戻ることだ。いま求められているのは――責任という新時代――だということ。米国民の1人ひとりが自分自身、自分の国、そして世界に対して義務を負うという認識だ。いやいや請け負う義務ではなく、喜んでつかむ義務だ。難しい課題に全力で向かうことほど、精神を満たし、我々らしさを見せることはないからだ。」 ※こうした真理=誠実さと勤勉、勇気と公正、寛容さと好奇心、忠誠心と愛国心などだ。これらは普遍の真理である
オバマの評価や仕事の成否以上に、全世界の人々が、オバマの提言やこれからやろうとしている事の意味を深く理解して自ら実践すること、それこそがオバマが期待していることだと理解できます。
これまでの「金融資本主義」、「株主至上主義」は、最も大切な従業員の存在、協力企業の軽視につながるケースが多々見られました。もちろん企業が生き抜いていく上でやむをえない事も多いのですが、大切な従業員を切るということは苦渋の最後の選択です。昨今の状況を見ると、とてもそのように見えません。経営者としてのプライド、会社としての社会に果たす役割、「CSR」(企業の社会的責任)を企業の最上位に置いていたはずなのに、です。
企業の経営者にとっても、もう一度「真理」に立ち戻るべき時です。
■会社とは?
■自社がこの社会に存在する意義とは?
■経営するとはどういうことなのか?
■果たして自社はこれからの社会に貢献していくのか?
企業経営者であれば誰もが、高い利益をあげることが正しいことであるかのように言われてきましたが、それは結果であって、従業員の満足度、お客様のファン化、社会への貢献、それらが次の利益の源になることは、数多くの成功企業が実証済みです。
そして、オバマは就任演説の最後にこう述べています。
「革命(独立)の行方が最も危ぶまれた時、建国の父は人々にこう読むよう命じた。
『将来の世界で語られるようにしよう。希望と美徳以外は何一つ生き残ることができない真冬の日に、共通の危機にひんした都市と地方はともにそれに立ち向かった』
アメリカよ。共通の危機に直面した今、この困難な冬に、我々はこの時を超えた言葉を思い出そうではないか。」
日本においても本当の危機がこれからやってくるかもしれません。あるいはそこまでにはならないかもしれません。いずれにしても、従業員や協力企業と一丸となって難局に立ち向かわなければならない、そのための基本的な姿勢(企業理念)をもう一度検証するときでしょう。そうすれば顧客は必ず支持します。それが世界の流れになることを示唆しています。