文●キャリアコンサルタント　　吉崎　英伸

1. リーダーに不可欠なビジョン、決断力
　小泉内閣の後を引き継いだ総理は、2代続けて突然退陣し短命でした。この間日本は迷走しましたが、現在の総理にバトンタッチしても状況は好転せず、リーダーには明確なビジョンと果敢に決断・実行する力が欠かせないことを、国民に改めて印象づけました。
　この教訓は、企業においても同じことが言えます。経営者・幹部の決断がぐらつけば求心力がなくなります。目指す方向性が不明確で、主体的に目標を持つことができません。日々の活動においても動きが鈍くなり活力の低下を招くのです。
　
2. 決断しなければ何も生み出さない
　決断は、経営のあらゆる局面で必要とされます。しかし、決断にはリスクと責任が伴うため誰でも一様に決断出来るとは限りません。決断は勇気と意志の表れなのです。　
　「決断」する力は、失敗を恐れず何事も自分の責任で行い、いろんなことを数多く経験することで磨かれます。そのため、経営者・幹部は、直面する課題から逃げてはいけません。今までと同じようにやっていれば問題はないという考えや、問題の先送りは、時代の変化についていけず、何も変えられません。即断即決を要することも多々あります。決断し不退転で道を切り開いていくことによって、新たな仕事、お客様への価値（貢献）が生まれ、企業は発展を遂げます。これを実践していくのが経営者・幹部です。

3. 流れを変える決断力
　上級幹部や役員、経営者は現状に流されるのではなく、「今までの流れを変える」決断力も必要です。これまでの慣行・常識を打ち破るのは容易ではありませんが、力のある人材は、先行きを見据え考え抜いて、鋭い洞察力と決断力で新たな道筋をつけています。これが会社を変え大きく伸ばす原動力です。かつて「お中元・お歳暮をやめる、相手先にも断る」といった決断をした会社がありました。会社のポリシーとして、倫理上の観点から相当以前より実施しています。昨今のようにコスト削減のためにというご都合主義ではありません。これは従業員の行動を律する重要な決断だったと言えるでしょう。
　このように、経営には「本来どうあるべきか」の視点で考え、流れを変える決断力も必要になります。

4. 従業員の決断力を養う
　決断は経営者・幹部のみならず営業などの第一線においても重要です。ひとたび会社の外に出れば、誰でも社を代表して行動し自分で判断しなければなりません。特にお客様からの相談・要請等に対して、いちいち「持ち帰って相談します」と言っていては、信頼関係は生まれません。
　そこで問われるのが、社長の意を体して自分で決断する力です。「意を体する」とは、人の思いや考えを理解し、それに沿って行動することを言います。会社の考え方を深く理解し、自分の言葉として伝えられるようになると、その時々適切に判断することが可能となります。従業員一人ひとりの決断力を養うためには、経営者は日頃から会社の理念やビジョンを語り共有すること、及び仕事を任せチャレンジさせることがとても大切です。
　
　「自ら決断できる」のは、自立している人材を示します。そのような人材を多く育て、さらに飛躍していただきたいと思います。 

土光敏夫さん（注）の経営語録 
「経営の行動指針」（産能大出版）より 

1 60点主義で即決せよ。決断はタイムリーになせ。決めるべき時に決めぬのは度し難い失敗だ。
2 自分の立場よりも相手の立場で考えよ。そのことによって正しい行動が生まれる。 

（注）1896-1988。元経団連・東芝・石川島播磨重工業会長。左記会社の再建や、行政改革に辣腕をふるう。謹厳実直な人柄と余人の追随を許さない抜群の行動力、そして質素な生活から、「ミスター合理化」「怒号敏夫」「めざしの土光さん」の異名をもつ。

弊社発行：成長企業のための情報誌「グローイングカンパニー」

2009年1月号（ＶＯＬ １０2）より

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