文●代表 宍戸 賢輔(公認会計士・税理士・MBA)
■「マスターズ」の魅力
「マスターズ」は、世界四大メジャー・ゴルフ・トーナメントの一つで、そのトップを切り、毎年、春四月に開催されます。※2
コースも不動で、ジョージア州の「オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ」で開催されます。
縮こまった寒さから解放されるこの季節に行われる、美しい「マスターズ」には、いつも晴々とした気分にさせられます。
「マスターズ」のもう一つの魅力は、その中で展開する人間ドラマでしょう。
目まぐるしく変わる局面、オーガスタに住むという女神(魔女)に悪戯されたような明暗、これもまた「マスターズ」の魅力ではないでしょうか。
■ 猛追するフィルでしたが
最終日、共に複数回の優勝経験のあるフィル・ミケルソンとタイガー・ウッズが一〇位タイの4アンダー同組スタート。最終組より六組も早く、爆発力のある二人です。大きなドラマが予感されました。
最終組は苦労人のアンヘル・カブレラと四八歳※3のペニー・ケリーでともに11アンダーのスタートでした。
最終組の4〜5ホール前を行くフィルは、前半だけで6バーディで10アンダー。
この時点ではトップに1打差の2位対で、伸び悩むケニーをほとんど捕えていました。
後半は、思わず「神に祈る」ところから名づけられたという「アーメン・コーナー」にある十一番から十三番が、最もドラマチックなホールですが、今年は、それまで女神に見守られていたフィルが餌食になってしまいました。
十二番パー3、絶好調のフィルの第一打は、クリークに捕まり、ダブルボギーで追い上げムードにブレーキが掛かります。
その後もフィルは、短いバーディやイーグルパットをことごとく外し、優勝圏外に去りました。
■ ペニーとアンヘルの明暗
10番ティのペニーは、猛追してきたフィルの12番でのダブルボギーを知っていました。
『これで敵は、アンヘルと一組前を行くチャド・キャンベルに絞られた。まさに“眼前の敵”とオーガスタを相手にすればいい』のだと思ったことでしょう。
今、女神はペニーに寄り添ったようです。
ペニーは、順調に女神に守られて12番、15番そして16番とバーディを重ね、2位に2打差の14アンダーという安全圏に逃げたかのようでした。
■ メジャーの恐ろしさ
しかし、メジャーで勝つことは至難なようです。ペニーには苦い経験があります。
13年前(96年)の全米プロでプレーオフの末に敗れ、2位に終わったことです。
17番ペニーの顔は、いくぶん蒼白なように見えました。今まで安定していたドライバーの1打目を右に曲げ、2打目をバンカーに入れて、ボギー。
18番、一打目は飛びすぎてバンカーに直接入り、2打目はグリーンから遥かに遠い左に外してしまい、2連続のボギー。
■ アンヘル・カブレラの優勝
プレーオフの末、アルゼンチン初の「マスターズ」チャンピオンが誕生しました。
ずっと静かに耐え忍んでいた苦労人カブレラに、女神はほほ笑みました。
※1 マスターズ4日目スコア(ホールバイホール)を見ながら読んでください。 ※2 四大メジャーには、他に全米オープン、全英オープンと全米プロがあります。
※3 もし、ケニー・ペリーが優勝すれば、最年長優勝者の記録でした。