文●税理士 北川 順一
国税庁より「平成21年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」(H21.6.8)という通達が公表されました。類似業種の対象会社の見直しは例年行われていますが、今回は、業種目の全面見直しが行われました。
貴社の業種が見直しの対象となっている場合、株価が大幅に変動している可能性があります。株価が上がっていれば、株価対策(相続対策)の見直しが必要ですし、下がっていれば、株式移動等の相続対策実行のチャンスです。
2. 業種目が見直された理由
情報通信の高度化、経済活動のサービス化の進展等の産業構造の変化に対応するため「日本標準産業分類」(H20年4月施行)改定が行われたのに伴い、今回、業種目が見直されました。
3. 今回の業種目見直しの影響
今回の業種目の見直しは、かなり大幅なものです。大分類の新設はじめ、中・小分類の半分以上が見直されています。会社業績にそれほどの変化がなくても、計算上の株価は、驚くほど変動している可能性があります。
その理由は、複雑な計算式にあります。図表1のとおり、類似業種比準方式による株価計算式では、A・B・C・Dが、国税庁から公表されるデータに依存しますが、どの業種目のA・B・C・Dを使用しなければならないかの区分が今回見直しされたのです。つまり、会社によっては、計算の前提が変わってしまったということです!
図表2、図表3により、業種目見直しによる影響額の例示をご確認下さい。株価が数十%変動する可能性があることがお分かりいただけると思います。
4. 要注意の業種
業種目見直しのパターンは2つで、業種目の分離・新設又は集約・削除です。それぞれの主な業種は以下のとおりです。
1. 分離・新設された主な業種目
医療/福祉 教育/学習支援業 宿泊/飲食サービス業 専門/技術サービス 物品賃貸業 情報通信業運輸業/郵便業 電子部品・デバイス・電子回路製造業 など
2. 集約・削除された主な業種目
食料品製造業(小分類) 繊維工業(小分類) パルプ・紙・紙加工品製造業(小分類) 鉄鋼業(小分類) 運輸・倉庫業(中分類) など
上記以外でも多数の業種目にて分離・新設及び集約・削除が行われています。
3. 要注意の業績
結局、見直し前後でA・B・C・Dが大きく変動している業種が、要注意です。
・Aが上がれば、株価は上がる
・B・C・Dが上がれば、株価は下がる
この組合せの結果、貴社の株価はどうなったのか。ここが肝要です。
5. 株価評価と対策の機会に!
未公開株式の評価方法については、類似業種比準方式だけで計算する場合や、純資産価額方式と按分して計算する場合などもあります。今回の業種目の見直しを、貴社の株価評価の実施及び株価・相続対策検討の機会としていただくとともに、詳細は、私ども専門家にご相談下さい。
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(注)図表2及び3の計算は、見直し前は平成20年12月、見直し後は平成21年1月にて評価した場合を前提としています。なお説明のための簡易計算ですので、実際に計算した場合と相違しますので、ご了承ください。