文●キャリアコンサルタント 吉崎 英伸
部下はどう見ているか、第3弾は上司の品性について考察します。
辞書によれば品性とは、「道徳的価値を基準としたその人の性格、人柄」とあります。財界の鞍馬天狗と言われ広く尊敬された元日本興業銀行頭取、故中山素平氏は、仕事を進めていく心構えとして、「心つよく、心広く、心温かくしていくこと」が大切であると説いています(高杉良「小説日本興業銀行」)。「心強く」とは不撓不屈の心構え、「心広く」とは協調、寛大、度量など相手を尊重する広い心構え、「心温かく」とは愛情の豊かさ、誠実さ、共に助け合う気持ちを示します。一言でいえば、「ビジネスでは品性をもって当たれ」と行員に訴えたもので、環境の厳しい今日でも含蓄のある傾聴すべきメッセージだと思います。実力主義の時代であればこそ、仕事にばかり目を向けるのではなく、ゆとりを持ち、人を思いやり人間的な豊かさを持つことが大事です。上司だからと言って、偉そうに振る舞ったり、私利私欲に心を動かされず、部下から信頼される人間でありたいものです。
ひと頃の企業不祥事において、トップが嘘の釈明をしたり、責任逃れをする場面をよく見かけました。日頃立派なことを言っていても、薄っぺらな品性しか持ち合わせておらず、経営者としての資質は如何ほどのものかと思わざるを得ません。品性とは、「人として当たり前のことを当たり前にやること」とも言えますが、このような卑近な例からも分かるように、日頃から自分を素直に見つめなおし、人間性を高める努力が必要なようです。
下表に、上司として問題のある言動を列挙しました。いずれも職場の中で見受けられる実例ですが、「自分に思い当たる」項目があれば、是非正して下さい。この機会に自分を振り返り、自分を磨く一助にしていただければと思います。
■自己チェック項目
部下は上司のここがイヤ! [上司として好ましくない言動] | ○ | × |
1.問題が発生しても表面化しないように隠す | ||
2.問題が起こると矢面に立たず逃げ回っている | ||
3.「好きなようにやってくれ」と仕事を任せてくれるのはよいが、問題が 起こるとその人のせいにする | ||
4.部下の成果を、自分の業績のごとく上に報告する | ||
5.「俺の言うことが聞けないのか」と権力をかさに着る | ||
6.部下とは違う情報を持っていることをちらつかせ、共有化しない | ||
7.上司を通さなかったことに腹を立てられ、その後無視される | ||
8.どうでもいいような細かいことばかり注文をつけられ、ちっとも前に 進まない | ||
9.時間にルーズで、会議をだらだらと長い | ||
10.自分の好みで人を優遇している | ||
11.部下には厳しく自分に甘い、公私のケジメがない | ||
12.部下にほめ言葉を使っても、他の部署の人には全く反対に 部下をけなしている(二枚舌) | ||
13.「ブツブツ言わずに、とにかくやれ」と一方的に命令し、 部下の意見を聞かない | ||
14.「いいトシして、そんな仕事の仕方があるか」「給料をもらっていて、 そのやり方はなんだ」という言い方にプライドを傷つけられる | ||
15.「こんな失敗をして俺の立場はどうなるんだ」「こんな失敗をしたら、 俺の評価が下がる!」と自分本位に責められる | ||
16.部下には日頃「品質第一」と言いながら、お客様からクレームが 発生したときは、品質よりも自社のコストを優先し誠意が 見られない(有言不実行) |