文●マーケティングコンサルタント 中安 康
6月26日の日経新聞朝刊一面に、「通販、コンビニ・百貨店抜く。市場、8兆円強に。昨年度ネット経由が7割。」という記事が掲載されました。
野村総研の情報を基に計算して、2008年度は、通販全体で8兆円を上回り、そのうちネット通販が6兆2300億円と通販全体の7割強となるそうです。
コンビニが8兆円強、百貨店が7兆2千億円ですから、あっという間に一大市場になりました。ネット通販市場は、7年で12倍以上になりました。(2001年5千億円前後(日経推定)→2008年6兆2300億円、図参照)
ネット通販の代表選手たち
ネットショップで最大手の楽天市場には約28,000店が出店、衣料品や家電製品他約3560万点の商品が出品されています。
本のアマゾンも、本だけでなく音楽CDを始めとして様々な商品を置いています。その商品点数は約1000万点です。Yahoo!や楽天とは違い、これらの商品を倉庫に持っています。
従来のカタログ中心の通販会社も印刷コストやカタログ配送コストの削減から、毎年ネット通販を強化しネット比率が高くなっています。
リアルの店舗を持つ家電量販店を始めとした専門店やスーパーもネット販売を強化し成果を上げています。
その形態をみると様々です。例えば、完全にネットオーダーと宅配で取引を成立させているケース。楽天、Yahoo!、アマゾンがそうです。ネットで予約を行うケース。チケットや旅行等がそうです。この分野ではネット経由が既に50%を超えています。
実店舗と連動しているケースは、ネットスーパーが代表格でしょう。インターネットで注文すれば、夕方には注文した商品が届きます。スーパーの店員が店内で商品を探して、自宅まで届けます。セブン&アイ・ホールディングス鈴木敏文会長はインターネット販売について「私はご用聞きだと言っている。ご用聞きは家庭やその人に直接、意見を聞き、物を買ってもらうということだ。昔の御用聞き商売に戻ったというのが、新しい時代の流通のあり方になると思っている。そうなると情報の流し方、管理のあり方が大きく変わって当然だ」と語っています。イトーヨーカ堂は来年春までネットスーパーの対応が出来る店舗を2009年春に比較し50%増やす計画です。顧客の消費動向を直接把握し、従来のモノ情報(POS)から人中心情報の仕組みを作ろうとしています。
消費の現場がコンビニによって消費者の居場所に近づきましたが、ネット通販によって完全に自宅に入り込んだという側面は非常に重要です。
日本向けの日用品が世界へ渡る!?
ネット通販の実物を見ないというリスクも、利用者の声や、賢い商店主によって健全に育ち始めています。
このことによって今新たに大きなうねりが始まろうとしています。アジア特に中国では、日本製品に対する信頼は非常に高いことは良く知られていますが、世界的な展開を行っているアマゾンは、関西空港からわずか30分の場所に巨大な流通倉庫をこの8月に稼動します。関西を中心に西日本で商品のより迅速な配達を進めることが目的ですが、将来の海外特にアジアへの輸出を視野に入れています。
日本の国内でしか売ることを考えていない商品が、海外で売れ、国内の売上を、あっという間に上回ることが、現実になるかもしれません。これからはweb to(Webを通じて)が大きな流れとなります。ネット通販で起きていることをウオッチしながら自社のビジネスにどう反映させるかの知恵が必要です。
情報ビジネスの向こうに見えるのは、ホンモノを待つ世界の消費者の姿かもしれません。