文●税理士 北川 順一

 前号では、相続税の概算計算ということで、相続税が課税される金額が決まった後の相続税額計算の仕組みについて、その概要を説明しました。ポイントとして、・法定相続分に応じた相続税額の総額を計算した後に、実際に相続する財産額に応じて各人の相続税額が決まること、・基礎控除や配偶者の特別控除の効果により、意外と納税しなくて済む確率が高いことを挙げました。  今回は、相続税の対象となる金額の計算について、財産ごとに決められている評価方法の特例等により、評価減の可能性をご検討いただくためのチェックリストを掲載しています。利用できる項目があれば、それだけ相続税が下がりますのでぜひご検討下さい。

1. 土地は形で評価が変わる
 路線価で評価する土地の評価は、その形状により評価の増減があります。間口が狭い、奥行きが長い、形が歪(いびつ)、がけ地を含むなどの場合には、補正率表等により一定の評価減が認められています。逆に、角地であったり、二方、三方を道路に囲まれている場合には、加算率表等により評価増しなければなりません。
 これらの評価増減を加味して、まずは、自用地としての土地の評価が計算されます。

2. 土地は使用目的で評価が変わる!
 土地の評価は、自用地として計算した後、使用目的による評価の減額を行います。自分が所有するアパート等の敷地なら、貸家建付地としての評価減、自分の土地を他人の自宅等として貸していれば貸宅地として評価減できます。
 さらに、事業用、居住用として使用している小規模宅地については、最大80%の評価減が可能です。80%の評価減は利用しない手はありませんので、適用要件を十分に検討しておくべきでしょう。

3. 取引所の相場のない株式は規模や業種で評価が変わる!
 取引所の相場のない株式ほど、評価が複雑なものはありません。基本的には類似業種比準方式(A)と純資産価額方式(B)の2つの評価方法を会社規模に応じて按分します。会社規模は5段階に区分され、それぞれの区分ごとにA方式とB方式の按分割合が決まっていますので、会社規模の区分が変われば、評価額も変わるわけです。業種および売上高、従業員数、総資産額の組合せで区分が決まります。より評価の低い区分への移行が可能かどうか、ぜひご検討下さい。
 また、類似業種比準方式は、同じ業種の上場企業の株価を参考にする方式ですが、業種が変われば当然、参考にする株価の水準も変わります。兼業している法人の場合には、適用される業種に十分注意すべきです。

4. 生命保険金は非課税限度額がある!
 生命保険金については、非課税限度額が定められており、(500万円×法定相続人の数) の金額までは相続税が掛かりません。ただし、死亡保険金や生命保険契約に関する権利が相続税の対象となるか否かは、契約者、被保険者、受取人の関係により異なりますので、ご注意下さい。

5. 死亡退職金にも非課税限度額がある!
 死亡退職金についても、生命保険金と同様に、(500万円×法定相続人の数)の非課税限度額があります。

 相続税対策をご心配されている経営者、資産家の方々も数多くいらっしゃいますが、まずは、対象者の方の財産評価及び税額の概算計算の現状分析が重要です。前回と今回のご説明を参考にしていただき、ぜひ一度、相続税の試算を専門家にご相談下さい。 

【図表1】遺産総額計算における主な評価減項目チェックリスト 
以下のいずれかの項目に該当する場合には、相続財産の価額を減額できる可能性があります。

 区分

NO   財産 評価減の可能性がある項目・内容  評価減の効果 ck 

課税価格計算

の特例

 1 小規模宅地①  400㎡以下の事業用宅地等は、最高80%の減額特例あり。 ▲50%〜▲80% (※2)  
 2 小規模宅地②  240㎡以下の居住用宅地等は、最高80%の減額特例あり。    
 3 特定事業用 資産 自社株の発行済株式総数の2/3まで(最大10億円まで)のうち、10%(最大1億円まで)の減額特例あり。 ▲10%  (最大1億円)   
財産評価  4 土地① 奥行、間口狭小、奥行長大、不整形地、がけ地等について、補正率表等による減額あり。 各項目 ▲0%〜▲47%  
 5 土地②  側方路線(角地、準角地)、二方路線、三方路線、四方路線について、加算率表等による増額あり。 各項目 +1%〜+10%  
 6  土地③

土地を貸している場合、貸宅地として、自用地価額から借地権価額の控除あり。

貸宅地=自用地価額×(1−借地権割合)

▲20%〜▲90%  
 7  土地④

土地に建築した建物を貸している場合、貸家建付地として、自用地の額から、借地権割合に借家権割合を乗じた価額の控除あり。 

貸家建付地=自用地価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸借割合)

▲6%〜▲27%  
 8 家屋

貸家の場合、自用家屋価額から借家権価額の控除あり。

貸家=固定資産税評価額×(1−借家権割合)

▲30%  
 9 自社株①

取引相場のない株式は、会社規模別の評価方式変更による評価減の可能性あり。

会社規模は、業種・総資産額・従業員数・取引金額により判定される。 

ケースによる  
 10 自社株②

取引相場のない株式の評価は、業種変更による評価減の可能性あり。

兼業の場合、業種は主たる事業(50%以上)で判定される。(※3)

ケースによる  
非課税財産  11 生命保険金 保険金等のうち、(500万円×法定相続人の数)相当額は、非課税となる。 500万円 ×法定相続人数  
 12 退職金 退職金のうち、(500万円×法定相続人の数)相当額は、非課税となる。  500万円 ×法定相続人数  
 13 寄附金 相続財産等の国等への寄付は、非課税となる。 寄付金額   
債務控除  14 確定債務 被相続人死亡時の確定債務は、相続財産額から控除できる。  債務額  
 15 公租公課 被相続人の税金は、相続財産額から控除できる。  税額  
 16 葬式費用  通常必要と認められる葬式費用は、相続財産額から控除できる。 ・該当しないもの:香典返礼費用、墓碑・墓地等購入費用、法会費用など 葬式費用  

※1 :各項目ごとに、法令等により適用条件が定められていますので、ご留意下さい。
※2 :小規模宅地等の減額特例は、事業用等宅地等と居住用宅地等との選択には、一定の要件があります。
※3 :50%以上の主たる事業がない場合の取扱いは、別途定められています。
 

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