文●マーケティングコンサルタント 中安 康
全世界で起きる異常気象、地球温暖化防止は急務ですが、確実に温暖化は進んでいます。今、我々企業人に求められるのは、変化に対するダイナミックな対応です。
温暖化が引き起こす異常気象
都市型ゲリラ豪雨、台風の大型化、竜巻の発生、などなど。最近の夏は東南アジアのスコールのように、急に強い雨が降り、しばらくするとぴたっと止んで暑くなるということが各地でおきています。誰もが、日本が熱帯化しつつあるということを肌で感じるこのごろです。坪木和久・名古屋大准教授は「温暖化が進みつつあるので、極端に発達する台風が発生するのは不思議ではない。いかに予報し、災害軽減対策を講じるかが重要になる」としています。
温暖化が及ぼす影響
- 北極・南極の氷河の崩壊と海面の膨張による海面上昇
- 気候の変化が激しく、大型ハリケーンの発生やかたや干ばつなどの予想を超える被害の発生
- 気温の上昇により、農作物の被害が大きく、対応を怠ると甚大な被害が発生
- 永い間、その地域に適した生態系が存在していたが、急激な気候変動による絶滅種の発生など、食物連鎖に多大な影響
- 気温の上昇により、熱帯や亜熱帯に見られる感染症の媒介動物の活動範囲が急速に拡大
以上のようなことが複合的に起こると、その影響は大きくなります。2005年にアメリカのニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーヌのケースは、ミシシッピー川の護岸工事の遅れも指摘されたとおり、昔は湿地帯だった地域に住む低所得者層を直撃しました。
2や3については、世界規模の護岸工事の必要性。また万が一浸水しても大丈夫な建造物、あるいは一階部分が浸水しても問題のない設計。既にハウスメーカの一部には、一階が浸水しても大丈夫な住宅の開発・販売を行う会社も出てきています。
4については、特にお米の品種対応が急ピッチで行われています。九州では、従来種では品質が急落、高温障害に強い品種を開発し対応し始めています。更には、従来収穫できなかった北海道で美味しいお米が採れるようにもなりました。またみかんで有名な愛媛・宇和島でも従来の品種のみかんの品質が下がり、イタリアのシチリアとほぼ同じ年間気温(17度)を生かし、地中海産オレンジ「タロッコ」の作付けに成功。従来の相場に左右されるみかんから、独自の商品により安定した経営が可能になり始めました。
・については時間をかけてその影響と対応を行う問題です。
・については、今まで日本にはいなかった猛毒な感染症、マラリアやデング熱が上陸する可能性が高く、媒介動物の退治と抗生物質の開発が必要です。
大きなビジネスチャンス
従来の発想を変え可能性を見ると、そこには巨大なビジネスチャンスが埋っています。
巨大な建設需要であり、環境の変化に対応した食住のダイナミックな変化対応、更には、伝染病の蔓延を防ぐための企業の開発力などです。
例えば衣料品の世界では、従来は、8、9月になると秋物が売れていましたが、最近では売れなくなっています。しかし、そのまま夏物を置いても消費者には飽きられます。そういった中で、「見た目は秋、機能は夏」という商品が売れているそうです。購入者の「そろそろ秋モノという頭と、まだ暑いという実感」のギャップ、そこにも新商品開発のヒントが隠されています。
必要なのは、内需関連の企業であっても、広く世界にアンテナを張り、ヒントを探し、取り込む力です。人類全てに最も重要な環境問題で、世界は同質化し同じ局面に立たされています。