文●マーケティングコンサルタント 中安 康
長い間、ユーザーの購買プロセスは、AIDMAという言葉で集約されていました。
Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action (行動)。
認知し(Attention)購買意欲が高まり(Interest→Desire→Memory)購入する(Action)でした。購買意欲の高まりに対して営業マンの努力が非常に大きな比重を占めていました。口コミ効果もごく限られた人の範囲でしかなく、マーケティングとして深く語られることがありませんでした。
しかし、インターネットが様々な情報収集の主流になったこの時代、購買パターンは大きく変化しています。それが、AISASです(商標:電通)。
AISASは、Attention(注目)→ Interest(関心)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有)というプロセスです。
ネット上の口コミ(共有)が大きな特徴
皆様もテレビで興味のあるニュースや商品を目にすると、すぐインターネットで調べるという経験はお持ちだと思います。その時、購入ユーザーの口コミ情報を参考にして最終的に判断をするという経験もされたことがあると思います。
特に、従来と大きく変わったのが飲食店。ネット上の口コミで話題になると、路地の中の常連しか入らない店だったのに、若い人がたくさん入っている事があります。お店も、安くて美味しい料理をきちんとサービス精神を持って提供すると、口コミで徐々にお客様が増えます。そんな店は若い女性が多いというのも特徴です。食に対する思いは男性よりもはるかに女性のほうが上だからです。
人のつながりを前提としない口コミ
ただし、ネットの口コミの怖いところは、良いという情報と同時に悪いという情報も広く流されるということです。マイナスの情報が流されると店を閉めざるを得ないという事態もあり得ます。常連客は何が旨いかを知っています。店の一見雑に見える対応も、かえってそのほうが心地いいという場合もあります。しかし、媒体やネットで来た初めてのお客様は違います。すべての商品を厳しく吟味します。店の対応に対しても非常に敏感です。それはフラッと入った店ではなく、話題の店だから来店したということで、お客様が評論家になっているからです。
まずいのは、一時的に来客が増え、常連客へのサービスが低下し、徐々にいいお客様が減るという現象です。このことは、購買というプロセスが変わったのではなく、新たな購買プロセスが発生しそのことに今後どう対応するかということを示唆しています。
いいお客様とは、時間をかけて信頼関係が築かれたお客様です。どんなお客様も最初は他人です。そのきっかけをネットは与えてくれます。
例えば、もし、初めて来られたお客様が、常連客の紹介で来られたお客様でなければ、常連の方々の好み、店のお勧め、もし不安なことがあればいつでもすぐ声をかけてほしい等々の気配りが必要です。いずれにしても、わざわざ遠くから来られたお客様を大切にもてなさないのは非常に失礼です。
ネットによって売り上げを拡大させるチャンスは、格段に広がりました。
しかし、AISASというプロセスの先にあるのは、今まで以上に、お客様の満足される商品とサービスの提供、常日頃からの分け隔てない接客、お客様の喜ばれる姿を通じた従業員の満足度向上と評価など、顧客満足度向上のプロセスの強化です。
購買プロセスの多様化は販売方法の多様化への対応と同時に、購入者満足度の向上が不可欠であることを教えてくれます。
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