文●代表 宍戸賢輔(公認会計士・税理士・MBA)
■ 『戦後最大の経済危機』
2月16日、実質国内総生産(GDP、以下GDPといいます)
速報が内閣府より発表されました。08年10−12月期
のGDPは前期比3.3%、年率換算で前期比12.7%減少となり、
年率換算が2桁のマイナスは第一次オイル・ショック
(75年1−3月期3.4%、年率換算13.1%減)以来、
2度目です。
まさにバケツの底が抜けたと表現できる落ち込みです。
『戦後最大の経済危機』と発表したのは与謝野経済担当相
ですが、彼は自民党の総裁候補の時に、日本経済への影響
は『蜂が刺した程度』と表現したその人です。
■ GDPの考え方
GDPとは、一国の経済を大きな経済指標5つに分類します。
- 内需関連項目
消費支出:民間でする消費支出(C)
投資支出:企業等が行う投資支出(I)
政府支出:財政支出や減税(G) - 外需関連項目
輸出:エキスポート(X)
輸入:インポート(M)
そうすると、GDPは以下のようになります。
GDP=C+I+G+(X−M)
以下、この算式でGDPの大幅下落をみてみましょう。
■ 大幅下落の原因1、外需関連項目
まず、輸出が13.9ポイントのマイナスで、過去最大の
下げ幅となりました。
貿易(X−M)面は、経済全体で3.0ポイントという大きな
マイナスです。
これまでの円安誘導、外需頼みの政策が、いっきに裏目に出た
形で輸出関連企業は、大幅な減益に追い込まれています。
今の世界経済を考えると、今後しばらく輸出が大幅に改善する
とは考えにくい状況です。
■ 大幅下落の原因2、内需関連項目
次いで、悪化する企業収益の中で、投資活動(I)が四半期
連続減少しました。また雇用問題や先行き不安の為、
個人消費(C)も減少し、民間需要は0.5ポイントのマイナス
となりました。
C+I=−0.5
政府の財政出動は、0.2ポイントのプラスでした。
G=0.2
従って、内需関連はトータルで0.3ポイントのマイナス
になりました。
このコラムでも何度か指摘したように、早い時期に
財政支出主導で内需を大きく刺激すべきであったのに、
完全に出遅れ感が否めません。
この結果、GDPは3.3%(年率換算12.7%)の減少となって
しまいました。
■ アメリカ、EUとの比較
一方、同じ時期のアメリカが年率3.8%の減少、EU圏が年率5.7%
の減少でした。
何と『蜂に刺された程度』の筈の日本の落込みは、欧米を
上回ってしまったのです。
政治家が緊張感なくG8で酩酊記者会見や政権の綱引きなどを
している暇はない筈なのです。
私たちはいい政治家を選ぶことでしっかりと政策を実行して
もらうしかないということになるでしょう。
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2009年3月号(VOL 104)より
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