文●代表 宍戸賢輔(公認会計士・税理士・MBA)
■経営者に必須の経営センス
「経営分析」というと何か専門的、技能的な響きを持っていますが、
私は、経営者には、必須の感覚や感性と思っています。
実際にも、日ごろ接している経営者の多くが、「経営分析」を知識
としてではなく、経営センスとして身につけられているようです。
そこで今回は、「貸借対照表」比率分析を感覚的・感性的におさらい
したいと思います。
■「貸借対照表」とは
図1をご参照ください。貸借対照表とは、会社の一定時点の財政状況、
即ち資産、負債及び資本をまとめた表です。
T字で左右に分け、左側(借方)に現・預金、売上債権の流動資産や
固定資産等の資産を表示し、右側(貸方)には買掛金、借入金等の
負債及び資本金、利益剰余金(会社に蓄えられた利益)等の資本の部
が表示されます。
■「貸借対照表」比率分析
「貸借対照表」比率分析とは、百分率(%)で資産、負債及び資本の部
を分解して表示したものです。
既に、図1「いい会社」と図2「ダメな会社」というふうに表現されて
いますが、図をじっくり見て、まずは、ご自身でその理由を考えて
みてください。
■「いい会社」はどこがいい ?!
まず、資本の部が、重厚です(自己資本比率が高い)。
これは、負債と違い、返済の必要がないものです。
一方で、これは会社が過去から多くの利益を出し、
それを蓄えていることも示しています。また、固定資産は全て、返済不要の資本の部でまかなわれています。手持ちの現・預金等だけで、全ての負債を返済できる状況です。 財務安全性は抜群です。流動資産の部で、売上債権や棚卸資産が少ないことは、
資金が効率的に回転していることです。俗にいう「資金が寝て」いない
ということになります。
更に、売上債権比率や棚卸資産比率が小さいことから、不良債権や
不良在庫が少ないと推察できます。
■「ダメな会社」はどこがダメ ?!
「いい会社」の分析から、もう解答が分かったと思いますが、まず、
資本の部が、薄く、過去からの利益水準も低かったと推察できます。従って、借入に依存せざるを得ない状況です。固定資産も、短期借入金 で賄っており、資金ショートの懸念があります。このことは、流動資産で流動負債が支払えないことでも分かります。更に、売上債権、棚卸資産の比率が比較的大きく、「資金が寝て」います。 また、不良債権や不良在庫の存在が疑われます。
■細心の配慮で決算書を作りましょう
是非、自分の会社で試してみてください。思っているより悪い数値が出ている
かもしれません。なかには、知識・ノウハウの欠如による決算書作成が
原因の時もよくあります。
決算書は、自分の会社の成績表です。経営者は、細心の注意を払って、
決算書を作成しましょう。
※ 今回は皆様になじみのある「資本の部」を使用しましたが、
会社法上は「純資産の部」と表示されます。
弊社発行:成長企業のための情報誌「グローイングカンパニー」
2009年6月号(VOL 107)より
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